「お話はわかりました。でも、ちょっとおかしくないですか?」
「おかしい?」
私はカップをソーサーに置いて、やや前のめりになって説明する。
「味覚というのは、人それぞれ違います。スイーツが好きな人は愁さんのケーキを美味しいと言うと思いますが、嫌いな人は美味しいと言いません」
「そうだね。でも、それが?」
「風間さんという方は、愁さんと婚約したいんですよね? それならば、わざと『美味しくない』と言い切ってしまう可能性があります」
私の言葉を聞いた途端、愁さんはポカンと口を開けて考え込んだ。
「いや、しかし……。出店を考える店のケーキを、わざとそんな風に言うとは思いたくないけど……」
「可能性の問題です。本当に愁さんが出店をしたくないのなら、この課題、変えてもらったほうがいいかもしれません」
真剣な眼差しを向けると、愁さんは少し驚いたように瞬きしたのち、ふっと目を細めて笑った。
「やっぱり、君にお願いして正解だった。僕はケーキを作ることくらいしか頭が回らなくて。こういったことも指摘してくれると、助かる」
柔らかな声と優しい微笑みに、胸の奥がじんわりと温かくなる。
こんな素敵な人に頼りにされるなんて、うれしいに決まっている。
だけど愁さんは、こんなにも完璧で、周りを惹きつける人だ。
自分が恋人役なんて、務まるはずがない。そう思うと、自然と視線を落としてしまう。
「でも、協力はしますけど、恋人役は……ちょっと」
断るのは心苦しいけれど、だからといって、軽々しく引き受けられるものでもない。
「僕が相手では、不服?」
「おかしい?」
私はカップをソーサーに置いて、やや前のめりになって説明する。
「味覚というのは、人それぞれ違います。スイーツが好きな人は愁さんのケーキを美味しいと言うと思いますが、嫌いな人は美味しいと言いません」
「そうだね。でも、それが?」
「風間さんという方は、愁さんと婚約したいんですよね? それならば、わざと『美味しくない』と言い切ってしまう可能性があります」
私の言葉を聞いた途端、愁さんはポカンと口を開けて考え込んだ。
「いや、しかし……。出店を考える店のケーキを、わざとそんな風に言うとは思いたくないけど……」
「可能性の問題です。本当に愁さんが出店をしたくないのなら、この課題、変えてもらったほうがいいかもしれません」
真剣な眼差しを向けると、愁さんは少し驚いたように瞬きしたのち、ふっと目を細めて笑った。
「やっぱり、君にお願いして正解だった。僕はケーキを作ることくらいしか頭が回らなくて。こういったことも指摘してくれると、助かる」
柔らかな声と優しい微笑みに、胸の奥がじんわりと温かくなる。
こんな素敵な人に頼りにされるなんて、うれしいに決まっている。
だけど愁さんは、こんなにも完璧で、周りを惹きつける人だ。
自分が恋人役なんて、務まるはずがない。そう思うと、自然と視線を落としてしまう。
「でも、協力はしますけど、恋人役は……ちょっと」
断るのは心苦しいけれど、だからといって、軽々しく引き受けられるものでもない。
「僕が相手では、不服?」



