ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜

「はい、ご注文のケーキセットです!」

 その空気を裂くように、店員さんが笑顔でケーキセットを運んできてテーブルの上に置いた。

「お二人さん、客の少ない時間とはいえ、いちゃつくなら家でやってくださいね」

 にやりと笑う店員さんに、私は思わず赤くなりそうになる。

「家でできないから、こうしてここに来てるんじゃないか。お互い父親の目が厳しいんだから。この店こそ、個室でも作ったらどうだ?」

 愁さんの言葉に、店員さんはすかさず反論した。

「おまえが入り浸りそうだから、絶対やだ」

 そんなふうに軽口を叩き合う二人のやりとりを見ていると、なんだか微笑ましくなった。
 お互い素直じゃないけれど、根底では信頼し合っているのが伝わってくる。

「ふふっ、お二人は仲がいいんですね」

 私が思わず笑うと、愁さんと店員さんは同時に「別に」とそっぽを向いた。
 やっぱり、この二人はどこまでいっても仲良しなのだ。