「……コ、コーヒー……です……」
おそるおそる口を開くと、律花さんは信じられないといった顔でケーキを指差した。
「そんな、嘘よ! だって、たしかにチョコレートだって……!」
そう口をついた瞬間、ハッとして口を押さえる。
「誰かから聞いたんでしょうか? それとも、覗き見でもしていましたか?」
「い、いえ……その……」
律花さんは動揺しながら、目を泳がせていた。
チョコレートとコーヒーは、微量な場合間違える時がある。
しかし、律花さんはまるで最初から知っていたような口ぶりだ。
それにしても、愁さんはいつの間に隠し味を変えたのだろうか?
愁さんが、冷徹な眼差しを律花さんに向ける。
「風間さん……。あなたの信用問題に関わると思うので、ここでは追及しません。しかし、僕はもうあなたの手口はわかっています」
その一言に、風間社長と秘書の二人も言葉を失い、視線が律花さんに向かう。
「くっ……」
律花さんは沈黙を続け、やがて観念したように口を開く。
「……そんなに私との婚約がお嫌ですか?」
「はい、申し訳ありません」
「わかりました。では、百貨店への出店の話はなかったことに」
「はい」
律花さんは、それ以上何も言わずに会議室を出て行った。
気まずい空気が残る中、彼女の姿がドアの向こうに消えるのを見送った。
風間社長は、冷や汗を拭いながら、私たちに向かって頭を下げた。
「いやはや、申し訳ない。まさかこんなことになるとは……」
「いえ、僕の方こそ、ご期待に添えられず申し訳ありません」
愁さんは、真摯な表情で社長に答える。
すると、突然謹二さんが笑い出した。
おそるおそる口を開くと、律花さんは信じられないといった顔でケーキを指差した。
「そんな、嘘よ! だって、たしかにチョコレートだって……!」
そう口をついた瞬間、ハッとして口を押さえる。
「誰かから聞いたんでしょうか? それとも、覗き見でもしていましたか?」
「い、いえ……その……」
律花さんは動揺しながら、目を泳がせていた。
チョコレートとコーヒーは、微量な場合間違える時がある。
しかし、律花さんはまるで最初から知っていたような口ぶりだ。
それにしても、愁さんはいつの間に隠し味を変えたのだろうか?
愁さんが、冷徹な眼差しを律花さんに向ける。
「風間さん……。あなたの信用問題に関わると思うので、ここでは追及しません。しかし、僕はもうあなたの手口はわかっています」
その一言に、風間社長と秘書の二人も言葉を失い、視線が律花さんに向かう。
「くっ……」
律花さんは沈黙を続け、やがて観念したように口を開く。
「……そんなに私との婚約がお嫌ですか?」
「はい、申し訳ありません」
「わかりました。では、百貨店への出店の話はなかったことに」
「はい」
律花さんは、それ以上何も言わずに会議室を出て行った。
気まずい空気が残る中、彼女の姿がドアの向こうに消えるのを見送った。
風間社長は、冷や汗を拭いながら、私たちに向かって頭を下げた。
「いやはや、申し訳ない。まさかこんなことになるとは……」
「いえ、僕の方こそ、ご期待に添えられず申し訳ありません」
愁さんは、真摯な表情で社長に答える。
すると、突然謹二さんが笑い出した。



