ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜

……もし、律花さんが隠し味を当ててしまったら、愁さんはどうするんだろう?
 やっぱりチョコレートは簡単すぎたのではないだろうか。
 今になって不安が広がっていく。

 チラリと愁さんの方に目を向けた。
 少し緊張した様子で三人の反応を見守っている。
 その表情には、いつもの余裕のある笑顔はなく、どこか真剣さが漂っていた。

 一瞬、目が合った。
 すると、愁さんがもう一つのケーキを三つの皿に分けて、こちらに差し出してきた。
 
「天音さんも食べてみますか?」

 ずっと不安に思っていても仕方がない。私は、ケーキの乗ったお皿を受け取った。
 
「……はい! いただきます!」

 制作過程でもう何度も味わったケーキだけど、おいしいことに変わりはない。
 私は、いつものテンションでケーキを口にした。
 
(……あれ?)