ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜

 そして、少し暑さも和らぎ、秋の気配が深まってきた十月。
 ついに、課題の日がやってきた。
 舞台は、高菱グループ本社のオフィスビル内にある会議室。

 会議室に入ると、まず目に入ったのは、凛とした佇まいの律花さんと風間社長、そして社長秘書らしき男性の姿だった。
 律花さんは黒のスーツに白いブラウスを合わせ、髪をきちんとまとめている。風間社長の重厚なダークグレーのスーツは、彼の威厳をさらに引き立てていた。

 一方で、愁さんはカジュアルながらもジャケットを羽織り、ほんの少しだけフォーマルな印象を加えている。謹二さんは落ち着いた色合いのスーツ姿。
 私はというと、普段はあまり着ないワンピースを身にまとい、緊張で肩がガチガチだ。

 会議室の大きな窓からは柔らかな陽射しが差し込み、その空間に静かな緊張感が漂っている。
 総勢六名──お互いに挨拶を交わし、早速準備していたケーキの箱を机の上に置く。
 保冷剤が入った箱からそっと取り出すと、ふわりとオレンジの香りが広がる。
 レシピ通りに作った4号サイズのケーキが、二つ並べて置かれる。