彼女を初めて見たのは、スイーツコンテストの会場だった。
すっきりとした清楚なワンピースを着て、夏らしく髪をポニーテールに結っていた。
僕よりも年下なのに、彼女は大人たちと一緒に審査員をしていた。
それが、たしか6年前だったと思う。
それまでは、ただケーキを売るだけのグルメイベントだったらしいが、彼女が来てからコンテスト形式に変わった。
その時の僕はまだ製菓学校の学生で、父の手伝いをしていたくらいでケーキを任せられる技術は持ち合わせていなかった。
なぜあんな子供が審査員に? 不思議に思っていると、誰かが言った。
『あの子、ファリーヌの娘さんでね。ものすごい味覚らしいよ。『神の舌を持つ娘』って呼ばれてる』
あんな子が?
だけど、審査の席でとてもおいしそうにケーキを食べる彼女を見て思った。
あんなに目を輝かせて、おいしそうに食べる子は初めてだ。
そして、あんなに綻んでいた顔が、審査の時には真剣になっていた。
その時に思った。
──僕の作ったケーキを食べてもらいたい。
彼女に認められたい。そうすれば自分に自信がつく気がする。
製菓学校を卒業し、父の元で修行を続けて二年、ようやくシャテーニュのケーキを任せてもらえるようになった。
それでも僕は、まだまだ「巨匠・栗本謹二」の息子と呼ばれていた。
ある時、雑誌に取り上げられた。
でもそれは、ケーキを取材に来たというよりも「巨匠・栗本謹二の息子」「イケメンパティシエ」と持て囃されるものだった。
結果として客は増えた。でも僕はこれ以降、雑誌などのメディアはすべて断った。
すっきりとした清楚なワンピースを着て、夏らしく髪をポニーテールに結っていた。
僕よりも年下なのに、彼女は大人たちと一緒に審査員をしていた。
それが、たしか6年前だったと思う。
それまでは、ただケーキを売るだけのグルメイベントだったらしいが、彼女が来てからコンテスト形式に変わった。
その時の僕はまだ製菓学校の学生で、父の手伝いをしていたくらいでケーキを任せられる技術は持ち合わせていなかった。
なぜあんな子供が審査員に? 不思議に思っていると、誰かが言った。
『あの子、ファリーヌの娘さんでね。ものすごい味覚らしいよ。『神の舌を持つ娘』って呼ばれてる』
あんな子が?
だけど、審査の席でとてもおいしそうにケーキを食べる彼女を見て思った。
あんなに目を輝かせて、おいしそうに食べる子は初めてだ。
そして、あんなに綻んでいた顔が、審査の時には真剣になっていた。
その時に思った。
──僕の作ったケーキを食べてもらいたい。
彼女に認められたい。そうすれば自分に自信がつく気がする。
製菓学校を卒業し、父の元で修行を続けて二年、ようやくシャテーニュのケーキを任せてもらえるようになった。
それでも僕は、まだまだ「巨匠・栗本謹二」の息子と呼ばれていた。
ある時、雑誌に取り上げられた。
でもそれは、ケーキを取材に来たというよりも「巨匠・栗本謹二の息子」「イケメンパティシエ」と持て囃されるものだった。
結果として客は増えた。でも僕はこれ以降、雑誌などのメディアはすべて断った。



