ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜

「責任を取るのは、やぶさかではないけど……。僕たち、いつの間にそういう関係になったのかな……?」
「あ……」
 
 そ、そうだよね、責任取ってください、なんて……。
 本当の彼女でもないのに、責任転嫁だった。
 私が課題のためのレシピ開発を引き受けたんだから、最後までやり遂げなければ。
 体重は、自己管理が足りないだけだ……。
 お腹を隠すように服を直し、愁さんに頭を下げる。
 
「……すみません。愁さんに責任を押し付けようとするなんて。私一人でなんとかします」
「えぇっ!? ちょ、ちょ、ちょっと待って!」

 愁さんは、慌てるように私の両肩を掴んできた。
 しかし、なぜか目線は合わせてくれない。
 
「失礼を承知で訊くけど、その、お腹の原因は、ほ、他の人……ってことはないよね?」

 その言葉を聞いて、私は驚き叫んだ。
 
「そんな! 私、愁さん以外の人のケーキなんて食べてません!」

 この間の、古都屋のどら焼きは別として。
 レシピ開発を引き受けてから数日経っているが、その間、私は他のスイーツは口にしていない。
 もちろん、うちのケーキもだ。お父さんが不思議がっていたが、なんとか誤魔化している。
 すると、愁さんは目を丸くした。
 
「……ん?」

 愁さんはこちらを向いてくれたが、数秒間の沈黙が訪れた。
 
「……はい?」
 
 何か、まずいことでも言ってしまっただろうか。
 愁さんはこめかみに手を当てて悩み始めた。