ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜

 ……と考えていたが、時間は待ってはくれず。
 今日も愁さんのお家で課題のためのレシピ開発&試食だ。
 その後には、きっとまた報酬のケーキセットが待っている。
 ケーキには抗えない。でも体重が……!
 ケーキを食べたい気持ちと、体重への不安が脳内でせめぎ合う。
 そんな様子を見て、愁さんは心配そうに声をかけてきた。
 
「どうしたの、天音さん?」
「あ、あの……愁さん、今日の研究、お休みしていいですか……?」

 手をモジモジとさせて言うと、愁さんは私の額に手を当ててきた。
 
「もしかして体調悪い?」
「そ、そういうわけではないのですが……」
 
 まさか、太っちゃったなんて言いづらい。

「もう課題提出まで日もあまりないし……。体調でないならお願いしてもいいかな……?」

 愁さんの困った顔を見ると、断りづらい。
 しかし、課題の日まで時間がないのも事実だ。
 目を閉じて考えるが、うまい言い訳が出ず言葉に詰まる。
 
「あぁ、う……」
「心配事? 遠慮なく言っていいよ」

 私は、その優しい言葉に甘えて、背筋を伸ばし──。
 
「しゅ……愁さんのせいでお腹がこんなになっちゃったんです! 責任取ってください!」
 
 ヤケになって、服の上からぽっこりした下腹を突き出して見せる。

「えっ!? ……ん!?」
 
 愁さんは真っ赤になって横を向いてしまった。
 ちょっと、はしたなかったかもしれない。
 チラリと私のお腹に目を向けて、愁さんはゆっくりと口を開いた。