ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜

 愁さんと一緒にレシピを考えて、ケーキセットをいただく日々が日常化してきた頃……。
 私には、恐れていることがひとつだけあった。
 お風呂上がりにバスタオル姿で鏡を見ると、それは目に見えて現れていた。
 頬の辺りが少し……ふっくらしてきたように思えるのだ。
 頬だけではない。おそるおそるタオルを取って横を向いて鏡を見ると、お腹もぽっこりと出ていた。力を入れればへこむけど、何もしなければ見事に主張している。

(う、嘘でしょ……?)
 
 ショックではあるが、確認しなければならない。
 そう、体重計だ。
 愁さんに出会ってから、乗ってなかった体重計。
 再びバスタオルを巻いて、そっと足を乗せる。
 不安は的中。デジタル表示が無情な数字を突きつけてきた。
 無駄だとわかりながらも、バスタオルを外してみたが、結果は誤差だった。
 
(ど、どうしよう……。これまで体重◯◯(自主規制)キロ台は維持していたのに……)
 
 パジャマを着て、もう一度鏡の前に立つ。
 お腹の辺りを軽く押さえると、パジャマの上からでもわかるほどのぽっこり具合だ。

(絶対に愁さんのケーキ食べ始めたからだよ……)
 
 レシピ開発のために毎回試食をして、さらに報酬のケーキセットまで食べて……。
 そりゃあ、美味しくて手が止まらなかったけど……。

(明日のレシピ開発……。お休みさせてもらおうかなぁ……)