艶のある凛とした声を発し、名刺を差し出してきた。
「初めまして。高菱百貨店の風間と申します」
名刺を受け取ると、今度は握手を求められる。
逃げられそうになく、私はそっと風間さんの手を握る。
「は、初めまして……佐藤、天音です」
相手は社長令嬢、片やこちらはスイーツが好きなだけの大学生。
風間さんは、タイトスカートのビジネススーツを着こなして、女性の私が見てもとてもかっこいい。愁さんと並べば、絵になるほどの美男美女だ。自分がここにいることが、場違いなように思えてしまう。
だけど、フリとはいえ今、愁さんの恋人は私。なにも臆することはない。
冷静に対応しようと、背筋を伸ばす。
風間さんは、まるで品定めするような視線を私に向けてきた。
「栗本さんに協力していると聞きました。それに、課題を変えるよう言ってきたのは、あなただそうね?」
「そうです」
負けてなるものかと、懸命に風間さんを見つめる。
見れば見るほど、非の打ちどころのない佇まいで、少しでも気を抜くと圧倒されそうだ。
「ふぅん……。まあ、あなたがどれだけ凄い味覚の持ち主でも、私は必ず当ててみせるわ。……せいぜい頑張ってちょうだい」
最後に急接近してきて、耳元で囁くように言われ驚いた。
「それでは栗本さん、今日はありがとうございました。またお会いしましょう」
「ええ。次は、ぜひ課題の日に」
「……そうですわね」
風間さんは、丁寧な所作でお辞儀をして去って行った。
その姿を二人で見送ると、愁さんが小さく息を吐く。
「ちょっと、寄っていかない?」
「いえ、帰ります……」
「ダメ。そんな顔で帰らせないよ」
顔を覗き込まれ、ドキッとする。そんなにひどい顔をしているだろうか?
「そうだ、いただいたお菓子、一緒に食べてくれないかな? 古都屋のどら焼きなんだけど」
ぐっ……。古都屋のどら焼き……!
心がぐらつくが、風間さんにいただいたお菓子というところが引っかかる。
迷っていると、愁さんは古都屋のシックなデザインの紙袋を持ち上げながら言った。
「そうかぁー。このどら焼き、消費期限が明日までなんだよなぁ。この量を父と二人で食べるのは大変だなぁー。誰か手伝ってくれると嬉しいんだけどなー」
わざとらしく大きくため息をついて言ってくるものだから、私も観念した。
「ああ、もう! わかりました! スイーツに罪はないですものね!」
「そうこなくっちゃ」
「初めまして。高菱百貨店の風間と申します」
名刺を受け取ると、今度は握手を求められる。
逃げられそうになく、私はそっと風間さんの手を握る。
「は、初めまして……佐藤、天音です」
相手は社長令嬢、片やこちらはスイーツが好きなだけの大学生。
風間さんは、タイトスカートのビジネススーツを着こなして、女性の私が見てもとてもかっこいい。愁さんと並べば、絵になるほどの美男美女だ。自分がここにいることが、場違いなように思えてしまう。
だけど、フリとはいえ今、愁さんの恋人は私。なにも臆することはない。
冷静に対応しようと、背筋を伸ばす。
風間さんは、まるで品定めするような視線を私に向けてきた。
「栗本さんに協力していると聞きました。それに、課題を変えるよう言ってきたのは、あなただそうね?」
「そうです」
負けてなるものかと、懸命に風間さんを見つめる。
見れば見るほど、非の打ちどころのない佇まいで、少しでも気を抜くと圧倒されそうだ。
「ふぅん……。まあ、あなたがどれだけ凄い味覚の持ち主でも、私は必ず当ててみせるわ。……せいぜい頑張ってちょうだい」
最後に急接近してきて、耳元で囁くように言われ驚いた。
「それでは栗本さん、今日はありがとうございました。またお会いしましょう」
「ええ。次は、ぜひ課題の日に」
「……そうですわね」
風間さんは、丁寧な所作でお辞儀をして去って行った。
その姿を二人で見送ると、愁さんが小さく息を吐く。
「ちょっと、寄っていかない?」
「いえ、帰ります……」
「ダメ。そんな顔で帰らせないよ」
顔を覗き込まれ、ドキッとする。そんなにひどい顔をしているだろうか?
「そうだ、いただいたお菓子、一緒に食べてくれないかな? 古都屋のどら焼きなんだけど」
ぐっ……。古都屋のどら焼き……!
心がぐらつくが、風間さんにいただいたお菓子というところが引っかかる。
迷っていると、愁さんは古都屋のシックなデザインの紙袋を持ち上げながら言った。
「そうかぁー。このどら焼き、消費期限が明日までなんだよなぁ。この量を父と二人で食べるのは大変だなぁー。誰か手伝ってくれると嬉しいんだけどなー」
わざとらしく大きくため息をついて言ってくるものだから、私も観念した。
「ああ、もう! わかりました! スイーツに罪はないですものね!」
「そうこなくっちゃ」



