ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜

「あ、そうだ。創ちゃんが誘ってくれたリノベーションイベント、実はこないだの実習先になってたんだ」
「え、そうだったんだ?」
「うん。創ちゃんのガイドを事前に聞いていたからか、そこは緊張せずに案内できた気がする! だから、誘ってくれてありがとう」
「お、おう。誘って良かったぜ」

 創ちゃんは、照れくさそうに鼻の頭をかいた。
 
 注文したものが、数分後に運ばれてきた。
 メインパスタはアラビアータ。サラダとドリンクも付いてくる。
 私はアイスティーで、創ちゃんはアイスコーヒーだ。
 フォークでくるくると麺を絡め取り、口に運ぶ。
 アラビアータの唐辛子の辛味、ニンニクの風味が口の中に広がり、頬の裏側がジーンとする。

「おいしそうに食うな」
 
 創ちゃんがサラダを口に運びながら、少し呆れたように笑う。

「だっておいしいんだもん」
「……俺も、料理とかできたら良かったな」
「えっ、どうして?」

 唐突な言葉に、フォークを持つ手を止める。
 創ちゃんが料理に興味を持つなんて、意外だった。
 
「そしたら、天音に食べてもらえるだろ?」

 なんか、私が食べるのが当たり前のような感じで言ってるけど、なんで私?
 そんなに私の食べっぷりを気に入ってるのかな?
 それとも、ただ感想を聞きたいだけ?
 
「それは嬉しいけど、私の舌が本領発揮するのは、スイーツだけだよ?」
「いや……別に、分析しろってわけじゃなくてだな……」

 創ちゃんは歯切れ悪く言葉を切り、ぼりぼりと頭をかいた。
 
「あーっ、だから、おまえがおいしそうに食べてるのを見たいっつーか……」

 頬が少し赤いような気がするけど、気のせい?
 創ちゃんは私が食べるのを見たいの? なんで? そんなに面白いのかな?
 よくわからず、きょとんとしてしまった。
 
「それは……ありがと、う……?」

 おいしいものをご馳走してくれるなら、嬉しいことはない。
 でも、なんだか変な感じ。
 創ちゃんは、私が食べる姿を楽しんでいるってこと……?
 
「はあぁ……。ま、いいや」

 創ちゃんは、何かを諦めたように大きくため息をついた。

 私はフォークを持ったまま、創ちゃんの顔を見た。
 創ちゃんは思い込みが激しく、なんでも大げさに受け取ってしまうことがある。
 だから、愁さんと付き合っていることも、噂が大きく歪んで伝わったりしたら大変だ。
 口止めするべきかどうか、迷う。
 
「あ、あのさ、創ちゃん……」
「うん? どした?」