まな板の上には、オレンジのゼストが。ボウルの中には、生クリームが出来上がっていく。
オレンジ一個で、約六グラムのゼストが出来上がる。
今回は試作だし、クリームの風味に使うだけなので一個分で充分だろう。
オレンジの香りが、ふんわりと漂ってくる。
これを少量、愁さんが泡立てた生クリームに入れて、味を確かめる。
優しい甘さと、オレンジの爽やかさが口の中に広がり、思わず頬に手を当てる。
愁さんも、スプーンで一口味見をする。
「美味しいです!」
「そうだね。君のアイデア、なかなかいいかもしれない」
オレンジの風味もだけど、生クリームがうちのケーキと違う気がする。
何が違うのだろう? メーカー? 泡立て方? 砂糖の種類や量?
さすがに、そこまでの情報は、先ほどのレシピには載っていなかった。
おっと、いけない……と、首を横に振る。今日は敵情視察に来たわけではないのに、ついいつもの癖で味の分析をしてしまっていた。私は今、愁さんの協力者。そこは間違えないようにしないと。
「さて、ここからが問題だね」
愁さんに言われて、視線を移す。
そうなのだ。ショートケーキを無難にアレンジしたところで、美味しいことは分かりきっている。
問題は、変更させてもらった課題「隠し味」だ。
私たちが入れた隠し味を、風間さんに当ててもらう。
当然、こちらは「百貨店に出店したくない側」なので、ある程度難しくしなければならない。
しかし、全くわからないほどの隠し味を入れても風間さんにはわからないだろうし、何より隠し味の意味がない。
隠し味は主張せず、だけどその存在を微かにわかるようにしなければならないのだ。
「問題は、何を隠し味にするか、ですよね」
「コンテストの時みたいに、ローズマリーはどうだろうか?」
「ローズマリーは香りが強いので、すぐに正解されてしまう気がします」
私はメモ帳に、オレンジに合いそうな隠し味の素材をリストアップしていく。
チョコレート、コーヒー、蜂蜜、シナモン、カルダモン、バニラ、ラズベリー……挙げればキリがない。首を捻って考え込む。
オレンジ一個で、約六グラムのゼストが出来上がる。
今回は試作だし、クリームの風味に使うだけなので一個分で充分だろう。
オレンジの香りが、ふんわりと漂ってくる。
これを少量、愁さんが泡立てた生クリームに入れて、味を確かめる。
優しい甘さと、オレンジの爽やかさが口の中に広がり、思わず頬に手を当てる。
愁さんも、スプーンで一口味見をする。
「美味しいです!」
「そうだね。君のアイデア、なかなかいいかもしれない」
オレンジの風味もだけど、生クリームがうちのケーキと違う気がする。
何が違うのだろう? メーカー? 泡立て方? 砂糖の種類や量?
さすがに、そこまでの情報は、先ほどのレシピには載っていなかった。
おっと、いけない……と、首を横に振る。今日は敵情視察に来たわけではないのに、ついいつもの癖で味の分析をしてしまっていた。私は今、愁さんの協力者。そこは間違えないようにしないと。
「さて、ここからが問題だね」
愁さんに言われて、視線を移す。
そうなのだ。ショートケーキを無難にアレンジしたところで、美味しいことは分かりきっている。
問題は、変更させてもらった課題「隠し味」だ。
私たちが入れた隠し味を、風間さんに当ててもらう。
当然、こちらは「百貨店に出店したくない側」なので、ある程度難しくしなければならない。
しかし、全くわからないほどの隠し味を入れても風間さんにはわからないだろうし、何より隠し味の意味がない。
隠し味は主張せず、だけどその存在を微かにわかるようにしなければならないのだ。
「問題は、何を隠し味にするか、ですよね」
「コンテストの時みたいに、ローズマリーはどうだろうか?」
「ローズマリーは香りが強いので、すぐに正解されてしまう気がします」
私はメモ帳に、オレンジに合いそうな隠し味の素材をリストアップしていく。
チョコレート、コーヒー、蜂蜜、シナモン、カルダモン、バニラ、ラズベリー……挙げればキリがない。首を捻って考え込む。



