ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜

 そして、全行程が無事に終了し、バスは東京駅へと滑り込むように停車した。

「皆さま、本日はお疲れ様でした!」

 冴木さんの明るい声がバス内に響く。
 お客様が荷物を手に取り、順番に降車していく。
 その一人ひとりに「ありがとうございました」「お気をつけて」と笑顔で声をかけながら、私たち実習生も最後の仕事をこなした。
 やがて、最後のお客様を見送り、バスの扉が静かに閉まる。

「お疲れ様、天音」

 百合香と顔を見合わせ、互いに笑う。
 疲れたけれど、心地よい疲労感だった。

「最初はどうなることかと思ったけど、なんとか乗り切ったね」
「うん。でも、まだまだ課題もたくさんあるなって実感した」

 そう話していると、冴木さんがバスの前方から歩いてきた。

「お疲れ様。みんな、よく頑張ってくれました」

 他の実習生たちも、それぞれホッとしたような表情を見せていた。
 添乗員としてはまだまだ未熟だけど、少しだけ成長できた気がする。

 バスを降りようとした時、赤レンガ造りの東京駅が目に入る。
 夕日に染まり、旅の終わりを穏やかに彩っていた。
 今日の実習は大変だったけれど、この景色を見ていると、なんだか報われた気がした。

 そのまま、余韻に浸りながらバスを降りようとしたその瞬間──