ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜

「落ち着いてください。最後に一緒にいた場所を覚えていますか?」

 冷静に尋ねると、山口さんは震える声で答えた。

「ええと……さっき、カフェでお茶を飲んで、それから雑貨屋さんを見て……。そのあと、一緒にいたはずなのに、気づいたらいなくなっていて……」

 辺りを見回すが、それらしい姿は見えない。
 私は百合香と顔を見合わせ、冴木さんの元へ行く。

「冴木さん、すぐ探しに行きます!」
「そうね……。じゃあ、みんなで手分けしましょう。古津さんは、私と一緒にお客様の対応を」

 みんな一斉に頷き、それぞれの場所へ向かった。
 この施設には館内放送がないため、自力で探すしかない。
 私は南館を探す。他の三人には、広い北館をお願いした。