ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜

 メインは、「和牛のローストと季節野菜のグリル」。
 焼きたての自家製パンも一緒に運ばれてきた。
 炭火でじっくり火を入れた和牛は、噛めばじゅわっと旨みがあふれ、かけられたソースも今までに味わったことのない、不思議で濃厚な味だ。
 添えられたパンは、香ばしく焼き上げられたソフトフランスパン。思わずお肉のソースをたっぷりつけて、ひと口。噛むたびに、パンの香ばしさとローストの旨みが絡み合い、幸せな余韻が残った。

「天音、それは反則でしょ……!」

 隣に座る百合香が、小声で呆れたように言った。

「えっ、だって美味しいもん……!」

 小さく言い訳するも、すでに周囲の視線が集まっている。
 みんな、ほんの少し気になっていたみたいだ。
 でも、テーブルマナーが気になって誰もやらなかったのかもしれない。