ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜

『神の舌を持つ娘』

 それが私の肩書きだ。
 ただし、スイーツに限る。
 もちろん、他の料理も美味しいものは好きだけど、私の舌が本領を発揮するのはスイーツのみだ。
 
 審査員席に座ると、すぐにケーキが用意された。
「はあぁぁぁ〜〜っ」
 目の前に置かれた二つのケーキを見て、思わず感嘆の声が漏れる。
 審査は公正を期すため匿名で行われるので、どちらがどちらのケーキかはわからない。
 でも、どちらも美味しそうだ。
 まず、左に置かれたAのケーキ。
 
 まるで芸術作品のような繊細なデザインだ。トップには、艶やかなグレーズが施され、光を受けてキラキラと輝いている。フルーツやエディブルフラワーが鮮やかに配置されており、色彩のバランスが見事。表面には、巧妙に絞られたクリームがまるでレースのように繊細に飾られており、細部まで計算されたデザインに感嘆せずにはいられない。味わう前から、これが特別な一品であることを感じさせる。

 そして、Bのケーキ。
 クラシックな美しさを追求したような、シンプルだけど、どこか洗練されたデザイン。
 トップには、カリッと焼き上げられたキャラメルグレーズが施されており、深い琥珀色の輝きが美しい。飾りつけには、カカオチュイルや上質なナッツが使用されている。ケーキ全体のバランスが絶妙で、重厚感も感じられる。思わず見とれてしまうほどの仕上がりだ。

 それぞれ、まず一口ずつゆっくりと味わう。