ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜

 そして、いよいよケーキ入刀の時間。
 愁さんと一緒にナイフを握り、ゆっくりとケーキに刃を入れる。
 フラッシュが一斉に光り、拍手と歓声が上がった。

 次は、ファーストバイト。
 私がカットしたケーキを愁さんの口元へ運ぶと、彼は少し恥ずかしそうにしながらも、大きな口を開けて食べてくれた。

「……美味しい」

 低く囁く声に、思わずドキッとする。
 そして次は、愁さんが私にケーキを食べさせる番だ。
 差し出されるフォークを見て、私は素直に口を開けた。

 ふわっと広がる甘さ。
 それは、幸せの味だった。

 私は胸がいっぱいになりながら、両親を見つめた。

「お父さん、お母さん、私、幸せです!」

 そう言うと、今度は母が目に涙を浮かべていた。
 愁さんはそんな私の手をぎゅっと握りしめる。

 私は、世界で一番幸せな花嫁だ。