ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜

 おそるおそる聞き返すと、愁さんはゆるく首を振り、少しだけ苦笑した。

「……うん。僕の理性が効かなくなって困るから、二人きりの時にね」
「~~~~っ!!」

 予想外の言葉に、頭の中が一瞬で真っ白になる。
 顔が一気に熱くなって、耳までぽかぽかしてくるのが自分でもわかった。

「ず、ずるいです……っ、そういうことサラッと言うの……!」

 思わず口をとがらせて抗議すると、愁さんはまるで何もなかったかのように、余裕の笑みを浮かべている。

「え? 僕、何かマズイこと言った?」
「もうっ……ほんとにずるいです、愁さん!」

 私は顔を愁さんの胸にうずめて、彼の肩をポカポカと叩いた。
 顔を上げると愁さんは、楽しそうに私を見つめていて、悔しいけど、その笑顔がまた好きで……だからそれ以上は何も言い返せなかった。