ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜

 愁さんが帰国して、数日後。
 ついに私の家に招く日がやってきた。

 リビングのローテーブルを囲むように、私、愁さん、父、母の四人が向かい合って座る。
 私の家は、どこにでもあるような普通の一軒家だ。特別広くもなければ、洒落たインテリアがあるわけでもない。
 ただ、古くから使っている花柄の座布団だけが、少しよそいきの空気をまとって並べられていた。

 テーブルの上には湯気の立つ湯呑。
 緊張のあまり、お茶の香りすらわからない。

 私も愁さんも、きちんと正座。
 こうして並んで座っているだけなのに、鼓動がどんどん早くなる。

 父が腕を組んだまま、じっと愁さんを見つめていた。
 その視線に耐えきれず、私は思わず口を開く。

「お父さん……」

 だけど返ってきたのは低くて落ち着いた、それでいてどこか張り詰めた声だった。

「天音……」
「はい……」

 身構える私に、父は小さく息を吸い、一拍置いて言った。

「俺はな、たしかに以前、彼氏を家に連れてこいとは言った。だがな……」

 あ……この感じ、もしかして。

「シャテーニュの息子だとは聞いてないぞ!? どういうつもりだ!?」

 ……やっぱり!
 私は思わず口元を押さえそうになった。

(うわぁ……謹二さんとまったく同じ反応してる……)