ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜

(……なにしてるの、私)

 画面に並ぶ、自分の言葉。
 愁さんは一度も責めたりしない。優しく返してくれるってわかってるのに。
 なのに私は、まるで子どもみたいに感情をぶつけて──。

 慌ててメッセージの取り消しをしようとしたけど、すぐに既読マークがつく。
 なんでこんな時だけ既読が早いの……。

 そしてすぐに返事がきた。

『ごめん』

 一言だけ。
 その簡素な返事を見て、どくんと心臓が痛いほど鳴った。

 愁さん、その“ごめん”は、なんの“ごめん”なの?

 ──毎日忙しくてごめん?
 ──会えなくてごめん?

 それとも……

 ──もう、終わりにしようって意味の“ごめん”?
 
 いやだ、どうしよう……。
 愁さんに嫌われちゃったかも……。
 
 私もすぐに『ごめん』って謝ればよかったのに。
 でも、いざとなったら、怖くて。

 答えを聞くのが怖くて、スマホの画面を伏せたままベッドに潜り込んだ。
 自分が恥ずかしくて、情けなくて。
 涙を流したまま、私はそのまま眠りに落ちた。