ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜

 その夜、ベッドに潜り込んでからも、なかなか寝つけなかった。
 スマホの画面を何度も見て、通知が来ていないことを確認しては、落ち着かない気持ちを深呼吸で押し込める。

 ようやくスマホが震えたのは、午前0時をまわった頃だった。

『おつかれさま。今日は会議が長引いて、返信できなくてごめん』

 たったそれだけのメッセージ。絵文字もない、淡々とした文章。
 本当は、届いただけで嬉しいはずなのに。
 その文字列を見た瞬間、胸の奥からチクリとした痛みがこみ上げた。

『そっか。忙しいんだね』
『愁さん、会いたいよ』

 連続で送ったメッセージに、既読がつく。
 少しして返ってきた言葉は、とてもシンプルだった。

『僕も会いたいよ』

 その瞬間、胸の奥がじんわりと熱くなる。
 だけど、それ以上に寂しさが募ってきて──。

『……嘘。私の方が、もっと会いたいもん』
『ずっと我慢してるの、私だけな気がする』

 送ったあと、指が止まらなくなった。

『愁さんは忙しいってわかってる』
『でも、わかってても、寂しいの』
『なんで平気なの? なんで私だけこんなに苦しいの?』

 そこまで打ち込んで、ハッとした。