ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜

 そのまま、ネックレスを外そうとする。

「あ、あの……門限が……」

 その先を想像して、思わず躊躇う。だけど、愁さんがくすっと笑った。

「天音さん、外泊できること、知ってるよ」
「え……?」

 愁さんはまるで全部を見透かすような目で、私を見つめていた。

「事前に申請すれば、外泊は可能だったよね?」
「そ、それは……」

 言い返せなくて、視線をそらす。
 愁さんは答えを待たずに、ネックレスを外した。
 私は観念したように、愁さんを見つめ返した。
 
「……なんだか、魔法が解けちゃいそう」

 私は今、素敵なドレスを着たシンデレラ。
 十二時の鐘を待たずに、一つ、また一つと、身につけていたものが外れていく。
 そう呟いた私に、愁さんがそっと指先を伸ばし、髪を耳の後ろへとかき寄せた。
 そして、真剣な瞳で囁く。

「だったら……僕の前では、魔法なんて解いてしまえばいい」

 ゆっくりと、優しく、けれど確かな言葉で続けた。

「全部、曝け出して。僕はそのままの天音さんが、いちばん好きだから」

 囁かれた瞬間、私の理性は、甘く溶けてかき消されていく。
 愁さんの指先が、私の髪から耳の方へ。
 そのまま優しくキスをされると、イヤリングが愁さんの手のひらにそっと収まった。

「今夜だけは、飾りも全部、いらない」

 その囁きは、耳元に熱を帯びていた。
 背中に、指先がそっと触れる。
 ドレスのファスナーが、するすると静かに下りていく。

 初めてではないのに、それでも恥ずかしくて……でも、逃げられなかった。
 愁さんの熱を帯びた瞳をまっすぐに見つめ返す。

 ファスナーが最後まで下りたとき、愁さんの腕がそっと私を包んだ。
 何も言葉はいらなかった。ただ、確かめるように、優しく、ゆっくりと──

 窓の外では、静かに夜が更けていく。
 私たちは、何も飾らず、ただありのままの姿で身体を重ね、長い夜を過ごした。