MOFとは、フランス国家最優秀職人章(Meilleur Ouvrier de France)の頭文字。
その名の通り、各分野で最高峰の技術を持つ職人にのみ与えられる称号だ。
ショコラティエ部門でMOFの称号を得ることは、まさに至難の業。
厳しい選考を経て数年に一度しか選ばれず、現役のMOFショコラティエは、フランス全土でも十数人しかいない。
その称号を手にした職人は、フランス国内だけでなく、世界中のパティシエやショコラティエから尊敬される存在となる。
そんな人物のホームパーティーに招かれるなんて、想像するだけで胸が高鳴る。
「僕のパートナーなら、一緒に行けるんだけど──」
そこで愁さんは言葉を止め、表情を曇らせた。
目を伏せて、首を横に振る。
「──いや、ごめん。またやってしまうところだった」
愁さんはポケットから、小さな箱を取り出した。
それを開くと、ケースの中で小さなダイヤの入った指輪が夕陽にきらめく。
「仕事は関係ない。僕が天音さんと一緒になりたい。結婚は、天音さんが卒業するまで待つよ。だから……正式に、婚約してください」
夕暮れのセーヌ川をバックに、愁さんは優しく微笑んでそう言った。
言葉が、出なかった。
嬉しさと驚きと、込み上げる想いが、胸をいっぱいにする。
「……はい」
それだけ言うのが精一杯だった。
愁さんは、私の手にそっと指輪をはめてくれた。
指先が触れ合うたび、心臓が少しだけ跳ねる。
そして、愁さんの両手がそのまま私の手を包み込む。
「日本へ帰ったら、天音さんのご両親に挨拶に行こう」
愁さんの言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなる。
こんなにも真っ直ぐに、私との未来を考えてくれている。
だけど……。
「実は、少し前に父が『彼氏をうちへ連れてきなさい』って言ってたんです」
クリスマスの時、『俺のケーキを食わせてやる!』って豪語していたことを思い出す。
あれから愁さんは、すぐにフランスへ立ってしまったため、その機会はなかった。
「そうなんだ。許してもらえた?」
「それが……。愁さんだということは、まだ言えてなくて……」
「そっか」
愁さんの指が、私の指に絡められる。
「大丈夫。認めてもらえるまで、何度だって言うよ。天音さんを愛してるって」
「愁さん……」
その言葉を聞いて、嬉しさが込み上げてきて涙がこぼれそうになる。
私はそれを必死にこらえて、この瞬間を大切にしたくて、ただ愁さんを見つめた。
その名の通り、各分野で最高峰の技術を持つ職人にのみ与えられる称号だ。
ショコラティエ部門でMOFの称号を得ることは、まさに至難の業。
厳しい選考を経て数年に一度しか選ばれず、現役のMOFショコラティエは、フランス全土でも十数人しかいない。
その称号を手にした職人は、フランス国内だけでなく、世界中のパティシエやショコラティエから尊敬される存在となる。
そんな人物のホームパーティーに招かれるなんて、想像するだけで胸が高鳴る。
「僕のパートナーなら、一緒に行けるんだけど──」
そこで愁さんは言葉を止め、表情を曇らせた。
目を伏せて、首を横に振る。
「──いや、ごめん。またやってしまうところだった」
愁さんはポケットから、小さな箱を取り出した。
それを開くと、ケースの中で小さなダイヤの入った指輪が夕陽にきらめく。
「仕事は関係ない。僕が天音さんと一緒になりたい。結婚は、天音さんが卒業するまで待つよ。だから……正式に、婚約してください」
夕暮れのセーヌ川をバックに、愁さんは優しく微笑んでそう言った。
言葉が、出なかった。
嬉しさと驚きと、込み上げる想いが、胸をいっぱいにする。
「……はい」
それだけ言うのが精一杯だった。
愁さんは、私の手にそっと指輪をはめてくれた。
指先が触れ合うたび、心臓が少しだけ跳ねる。
そして、愁さんの両手がそのまま私の手を包み込む。
「日本へ帰ったら、天音さんのご両親に挨拶に行こう」
愁さんの言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなる。
こんなにも真っ直ぐに、私との未来を考えてくれている。
だけど……。
「実は、少し前に父が『彼氏をうちへ連れてきなさい』って言ってたんです」
クリスマスの時、『俺のケーキを食わせてやる!』って豪語していたことを思い出す。
あれから愁さんは、すぐにフランスへ立ってしまったため、その機会はなかった。
「そうなんだ。許してもらえた?」
「それが……。愁さんだということは、まだ言えてなくて……」
「そっか」
愁さんの指が、私の指に絡められる。
「大丈夫。認めてもらえるまで、何度だって言うよ。天音さんを愛してるって」
「愁さん……」
その言葉を聞いて、嬉しさが込み上げてきて涙がこぼれそうになる。
私はそれを必死にこらえて、この瞬間を大切にしたくて、ただ愁さんを見つめた。



