ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜

 そして、セーヌ川へ。
 古くからパリの交通の要所として栄えたこの川は、1991年に河岸が世界遺産に登録された。
 お昼から続いたパリ観光も、気づけば夕暮れ時。
 オレンジと群青が溶け合う空の色が水面に映り、幻想的な世界を作り出している。

 川沿いには歴史ある建物が並び、暖かな街の灯りが静かにともる。
 その光が水面にも映り込み、ゆらゆらと揺れながら、まるで星が漂っているかのように瞬いていた。
 
「……きれい」

 思わず呟いた声が、川の流れに溶けていく。

「天音さん」

 不意打ちのように名前を呼ばれ、ドキリと胸が高鳴る。

「ショコラティエには興味ある?」