ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜

 鉄道に乗り、五十分ほどで愁さんの住むモンマルトルのアパートへ辿り着いた。
 アパートは、シンプルな作りで広さは12畳ほど。
 小さなキッチンとシャワールームがあり、壁際にシングルベッドが置かれている。
 愁さんの日本の家が大きな洋風の家だったから、てっきりパリでも広めのお部屋だとばかり思っていた。

 お互いさっとシャワーを浴びて、ベッドに並んで座る。 
「お疲れ様」とだけ言うと、軽くキスを交わした。
 どこか照れくさいけれど、優しいそのキスは不思議と落ち着く。
 すると、愁さんは私から少し離れて言った。
 
「僕は床で寝るよ」
「だ、ダメですよ、風邪ひきますよ……!」
「じゃあ……。ベッド、狭いけど一緒に寝る……?」

 そう言われて、ノーとは言えない。
 少し照れながらも、私はこくりとうなずく。
 
「は、はい……」

 二人でベッドに横になると、愁さんが背中側から私にくっついてくる。
 その温もりにドキドキしたけれど、次第に愁さんの寝息が聞こえてきた。
 仕事で疲れていたのか、すぐに眠りに落ちてしまったみたいだ。
 私は、ほんのちょっぴり期待していたけれど、あまりの心地よさに、長いフライトの疲れもあって、いつの間にか眠りに引き込まれていった。