ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜

「……待つしかないよ」

 当たり前のように答えながらも、胸の奥が小さく疼く。
 つぶやくと、百合香は大きく息をついて、私の肩をぐいっと掴んだ。

「追いかけちゃえば?」

 さらりと言われた言葉に、私は思わず空になったぜんざいの器を握りしめた。

「ええっ!? そ、そんなの無理だよ……!」

 驚きのあまり、つい声が大きくなる。
 周囲の参拝客が一瞬こちらをちらりと見た気がして、私は慌てて肩をすくめた。
 そんな私の様子を見て、百合香はクスクスと笑う。

「冗談みたいに聞こえるかもしれないけど、ほんとに無理?」

 静かな視線でそう問われ、私は言葉に詰まる。
 無理に決まってる。そんなこと、考えたことも──。

「そういえば、大学でフランス留学生の募集してたような」
「……!」

 百合香がぽつりと口にしたその一言に、雷に打たれたような衝撃が走った。
 頭の中で、愁さんの後ろ姿と、遠く離れたフランスの風景が重なる。

「それだ!」

 思わず立ち上がりそうになるほどの勢いで、私は声を上げた。