ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜

「天音、撮ってあげる」
「えっ?」
「愁さんに送ってあげなよ」
「えぇ……恥ずかしいな……」

 着物なんて滅多に着ないから、見てほしい気持ちはある。
 だけど、わざわざ写真を送るのは、なんだかあざとい気がする。
 
「大丈夫。最っ高〜に可愛いし、最っ高〜に可愛く撮ってあげるから!」

 百合香は、親指を立てて煽ててくる。

「メイク、くずれてない!?」
「大丈夫だってば!」

 風に揺れた前髪を直し、スマホカメラに向かってぎこちない笑顔を作る。

「表情が固い〜〜。ほら、あたしを愁さんだと思って!」

 百合香を愁さんだと思うなんて、無理があるけど……。
 だけど、あの夜のことを思い出して、にやけそうになる顔をおさえる。
 その瞬間、カシャリ、と電子音が鳴った。

「え」
「天音、いいの撮れた!」
「ちょっと待って、今のはナシ!」
「だーめ、もう送っちゃったもん」
「もう!」