「鹿島先輩。また来ちゃいました、ごめんなさい」
談話室から、また一人で鹿島先輩の元に来た。
鹿島先輩は読んでいた本を閉じる。
ページは、進んで無いように見えた。
「私は構わないですが、花咲さんはもう帰る時間では? 暗くなってしまいますよ」
「まだ大丈夫です。管理人さんが車、出してくれるんです」
「それなら構いませんが、どうしたんですか?」
さっきと同じように、椅子に座って、今度は泣かないように我慢して、鹿島先輩の事をじっと見る。
「鹿島先輩、私の事好きですか?」
「どうしたんですか、急に」
不思議そうに首を傾げる。
「奇跡を起こして、先輩が人になったら、消えちゃうことないかなってなったんです」
「夢野が考えました?」
「はい」
「起きたら良いですね、そんな奇跡」
呆れた様子で、鹿島先輩が笑う。
その言い方が、諦めているようで悔しかった。
「私は起こしたいですよ、奇跡」
強めに言うと、鹿島先輩は驚いていた。
「花咲さんは、私のこと好きなんです?」
「違います。でも、先輩が死ぬのは嫌です。先輩に生きて欲しいです。だから、奇跡を起こしたいんです!」
まっすぐ、まっすぐ、先輩を見つめる。
本気だって事、分かって欲しくて、触れられないと思って怖かった、透けている先輩の手を握った。
その手は、確かに触れた。私より低いけど、温度があった。
鹿島先輩は、今も生きている。
消えそうだけど、死んではない!
鹿島先輩は、驚いたように目を開いた後、困った顔で俯いた。
「その気持ちは有難いです。ですが、どうやって奇跡を起こすんですか?」
「今、みんなが、どうやって奇跡が起きたか調べてくれてます。もし分ったら、奇跡を起こしてくれますか?」
鹿島先輩は、私の手を握り返してくれた。



