放課後、生徒会寮に行く。
三階にある鹿島先輩の部屋は、物の少ない落ち着いた雰囲気の部屋だった。
今日休んでいたみんなや夢野先輩は入るのを躊躇していたので、私だけが鹿島先輩の部屋に入った。
「鹿島先輩」
私が声をかけると、本を読んでいた鹿島先輩は顔を上げる。
「こんにちは、わざわざ来てくださったんですね」
「……はい」
鹿島先輩の姿を見て、みんなが部屋に入るのを躊躇していた理由が分かった。
鹿島先輩は、体の何ヶ所にも包帯を巻いていて痛々しいし、そもそも消えかかっていて、鹿島先輩が腰掛けるベッドまで透けて見える。
言いたい事はいっぱいあった。
でも、本当に消えてしまいそうな人を前に、私は何にも言えなくなってしまう。
十三歳の私には、身近な人が死んでしまった経験は、まだ無い。
「そこの椅子使ってください」
立ち尽くす私に、鹿島先輩はベッド近くに置かれた椅子を示すので、座る。
「包帯が巻かれている部分は少し痛いですが、体全体は痛く無いので、本を読んでいたんです」
鹿島先輩はいつものように話してくれるけど、私は胸が苦しくて何も話せない。
「鹿島先輩……」
名前を呼ぶことしかできないんだ。
俯いた私を慰めるように、鹿島先輩の透けている手が伸ばされる。
もし、この手が私に触れられなかったら……
想像しただけで、心臓がギュッとなり、気づいたら伸ばされた手を躱してしまっていた。
鹿島先輩はそれに気がついたのか、悲しそうな顔をした。
「あっ、ごめんなさい、先輩」
「いえ、花咲さんは何も悪くないですよ。こんな状態ですから」
ひらひらと手を振るけど、……私の行動で、鹿島先輩を悲しませてしまった。
ただでさえ、先輩は今辛い状態なのに……。
「人の姿を得て、人として生きたいと思って行動していましたが、……やっぱり、私は花なんですね」
鹿島先輩が寂しそうに呟く。
そんなことないよって言いたいけど、鹿島先輩が消えかかっているのは、先輩が花だからだ。
「私は、鹿島先輩に消えて欲しくないです」
なんでこんな、いきなり。
……花の様に散っていってしまわないで。
悲しくて、怖くて、涙が止らなくなる。
「私も死ぬは気は無いです。ただ、私にもどうしようもできないことなんです」
嫌だよ……



