次の日、いつもより早く登校して生徒会室に行くと、夢野先輩が一人で居た。
先輩の顔色は悪く、空気が重い。
「夢野先輩! 鹿島先輩は?」
昨日からずっと不安で、挨拶よりも前に聞いてしまう。
「樹木医の方によって元の梅の木は治療したけど、結構損傷していて、完全に良くはなっていないよ。紅もまだ、体が消えかかっている危険な状態だ」
……そんな。
「……どうして、こんな事になったんですか? 花園は厳しく管理されている筈なのに侵入したって……」
考えても考えても、分からない。
頭の中、気持ち悪いくらいぐるぐるしちゃって、吠えるように夢野先輩に問いかける。
「その人はなんで、傷つけたんですか⁉︎ 花の精の事、知っていたんですか⁉︎」
先輩は、ゆっくりと首を横に振る。
「侵入した人は、花の精とかは知らないよ。その人は、この学校の卒業生。紅の元になった梅の木が好きで、紅が人の姿になったので移植してからは、ずっと探していたんだ」
「それで、今回見つけちゃった?」
「ああ、紅が温室から出てくる所を見て、声をかけ、体調不良なのもあって油断していたところ鍵を盗んだんだ」
その人としては、また梅の木を見たかっただけかもしれない。でも、
「その人、なんで梅の木を傷つけたんですか? 好きだったんですよね?」
夢野先輩は、信じられないと言った様子で教えてくれる。
「持ち帰ろうと枝をいくつか手折ったのと、可愛さが余って憎さが百倍と言うのかな、簡単に見ることができないのならと、隠し持っていたのこぎりで傷つけ、除草剤を撒いたらしい」
「酷い……」
なんで、そんな事をするの?
決して手に入らなくても、好きならば、大事にするべきなのに。
「慰めにはならないかもしれないけど、犯人は捕まっているよ」
本当に慰めにはならない。
だって、鹿島先輩が傷ついているのは、変わらないから。
「……鹿島先輩、危険な状態って言ってましたけど、どうなっちゃうんですか?」
夢野先輩は、重い口調で言った。
「……もし、治療が効果無くて梅の木が枯れたら、人の姿を保てず消えてしまうだろう。それは……人が死ぬのと変わらないね」
夢野先輩の言葉に一気に胸が苦しくなる。
だって、死ぬなんて。
そんなの嫌だ!
お別れも、さよならも、寂しい。
「今日、オレ以外の生徒会役員は休んでいるよ。精神ダメージが凄くてね」
みんなも、悲しくて辛くて仕方ないんだろう。
「放課後、紅に会いに行くかい?」
優しく問いかけた夢野先輩に、頷いた。



