台本のセリフを言いやすいように変えてもらった後、衣装が届くのを待っていると、
「あの、花咲さん。ありがとう」
話しかけてきたのは、同じクラスの女子、菱川さんだった。
「さっきのオープンステージの時、音響やってたの私なんだ」
菱川さんは、クラスの中では真面目そうな子。
彼女に直接いじめられてはないけど、今まで一回も話したことはない。
「私がミスしちゃったけど、花咲さんのおかげで助かった。本当にありがとう」
深々と頭を下げられた。
「私じゃなくて、夢野先輩が凄いんだよ」
「夢野先輩にも、お礼は言ったよ。……ごめん」
「なんで謝るの?」
菱川さんは、申し訳なさそうに言う。
「話しかけるなら、さっきうちのクラスの合唱の時に話しかけることもできたのに、あの時話しかけないで、今話しかけて」
ああ、そういう。
「別に気にしなくて大丈夫だよ。私に話しかけにくいのは、分かってるから」
「でも、今、私が話しかけたのも、夢野先輩が花咲さんと話してみなって背中を押してくれたからで……そうじゃなかったら結局、花咲さんにお礼を言うことだってしてなかったかもしれなくて……」
菱川さんは、自分の行動に後悔しているようだった。
自分の手をぎゅっと握り、どんどん俯いてしまっている。
「菱川さんは、後悔だけしてるの? それとも反省もしてる」
「私は……」
「後悔だけしているなら、そのままし続ければ良いよ。でも、反省してるなら、次に活かせば良いと思うよ」
俯いていた、菱川さんが顔を上げる。
「今度は、ちゃんと話したい。周りの目とか気にしないで。……話しかけても良いかな?」
「もちろん、いいよ。いつでも話しかけて」
「うん」



