「だが、どうやってやるんだ?」
「まずは、問題無さそうな事から、やってみるとか? ジャンプしてーとか」
「影谷」
千代田くんに呼ばれて、影谷くんが立ち上がる。
え、今やるの?
まぁ、お弁当は食べ終わっているけど。
「ジャンプして」
影谷くんは、動かない。
「一息で言ったら、どうなるの?」
「影谷ジャンプ」
これでも、影谷くんは動かない。
「命令形で言ってみたら、どうなんだ?」
「影谷、ジャンプして」
すると、影谷くんはぴょんとジャンプする。
「おー」
これは、ジャンプするんだ。
「なるほど。影谷くん、今ジャンプした時って、どんな気持ちだったの?」
「うーんと、ジャンプしなきゃって感じじゃなくて、気づいてたらジャンプしてたかも」
「意識してなくても、体が勝手に動いちゃうのか」
「言葉としては、命令するような言い方が危ないのかな?」
私達がわいわい話す間、千代田くんは黙っていた。
これで、何が分ったのか? と言っているような、少し不満げのある顔をしていた。
「私は使えるなって思ったよ」
「何に?」
「この前、影谷くんに、自分の流した涙は鈴蘭になるけど、どうしても見たい感動映画が有るから一緒に映画館行こうって誘われたんだけど、役に立てるかなって思ってたの。だけど、千代田くんが映画の間だけ涙を流さないでって言えば良いなって」
「え、鈴。誘ったの!」
鼓くんに言われ、影谷くんは気まずそうに答える。
「……うん、まぁ」
この反応、もしかして内緒にしていた方が良かった?
それなら、ごめんかも。
「確かに、俺も役立てるかもね」
千代田くん、言っている事はポジティブだけど、顔はちょっと怖い。
影谷くんをジッと圧のある目で見ている。
「そんな怖い顔しないでよ。秘密にしてたのは悪かったけど、二人が良かったの」
影谷くんは、拗ねたように口を尖らせる。
そんな姿を見て、千代田くんは、
「俺も二人が良い。花咲、どこか行こ?」
あれ、こっちに来ちゃった。
「えー、二人ともそう言う感じ? じゃあ、花咲、オレとも二人でどこか行こうよ。そうだな、動物園とかどう?」
鼓くんまで……。
三人が結構真剣な目で私を見るのは、ドキドキするけど、……二人きりってのはちょっと。
みんなのこと、格好いいとか、可愛いなとは思う。
でも、今の私に恋愛ってものは、微妙なのだ。
「誰と行きたい?」
「どれも楽しそうだから、全部かな」
だからこうして逃げてしまう。
ごめんね、みんな。



