金曜日がバレンタインで、土、日と休日が有り、月曜日。

選挙管理委員会の人が土日に集計してくれたらしく、学校に行くと、生徒会長選挙の結果が張り出されていた。

名前と共に、票数が張り出され、一つの名前の前に赤い花がついている。

花がついていたのは……


「鹿島 紅」


え、鹿島先輩? 

会長じゃなくて、鹿島先輩が会長なの!?


票数的には、会長がだいたい三百票。鹿島先輩が四百票。

天と地ほど差があるわけじゃないけど、百票も離れている。

同じように掲示板を見ている、登校してきた生徒は、驚きの方が多そうな感じだった。


集計をミスったとかは無いと思う。

だからこれが、本当の結果。

受け入れるべきなんだけど、この驚きを一人で抱えていられないので、急いで生徒会室に行く。

生徒会室には誰かいるのか、鍵が開いていた。


「失礼します」


廊下とは全然違う、生徒会室の中。

そこには一人、鹿島先輩が居る。

会長は居ない。


いつもは、朝居るのに。


「おはようございます、花咲さん。足音が聞こえましたが、廊下を走るのは良くないですよ」

「……はい。おはようございます」


鹿島先輩はいつも通りだった。

冷静で、真面目な先輩。


鹿島先輩は、いつも自分が使っている机の整理と掃除をしているようだった。


……生徒会長になったら、場所変わるもんね。


私の席は、鹿島先輩の隣の隣。

近づくことはできなくて、立ち尽くす。


ずっと無言なのが耐えられなくて、つい話しかけてしまう。


「あの……鹿島先輩は予想していましたか? 自分が、生徒会長になるって」


鹿島先輩は、机の片付けをしたまま答えてくれる。


「ええ。絶対とは言い切れませんが、その確率は高いなと思っていました」


そうなんだ。

私には、そんなこと全然分かってなかった。


「私が生徒会長になったからといって、方針が大きく変わることわないので、花咲さん、これからも宜しくお願いします」

「はい。……あの、鹿島先輩は生徒会長目指してましたか?」


聞かない方が良いかもしれない、どう答えて欲しいのかは、分からない。

それでも、聞いてしまった。


鹿島先輩は、手を止め、私を見る。


「はい。ずっと、なりたいなって思ってましたよ」


ふわりと、鹿島先輩は笑った。


こんな笑顔見たの初めてだな。


なぜか、胸が苦しくなった。