「だ、大丈夫か⁉」
「なんで、食べちゃったの!?」
鼓くんは驚きながら心配していて、影谷くんは泣きそうな顔をしている。
「せっかく、おいしそうなのに食べないのもったいないじゃん」
「でも、毒があったかもしれないのに」
影谷くんは、不安そうに胸の前で指を組んでいる。
「影谷くん気をつけてたのを見てたから、大丈夫だって思ったの。実際大丈夫だったし、おいしかったよチョコラスク。もう一個、食べていい?」
影谷くんは泣きそうな顔のまま、こくりとうなずいた。
じゃあ、もう一個とラスクを手にとろうとして、その手をつかまれる。鼓くんだった。
「それでも、もし何かあったら、どうするの!」
私は、鼓くんの手を取り返す。
「その時は、鼓くんの癒しの力を頼ろうかなって」
すごい鼓くん頼りの考えだけどね。
「花咲、オレの力がどこまで効くか分かんないでしょ」
「でも、鼓くんなら助けてくれるって思っちゃっているんだ」
二回だけかもしれないけど、私はもう信じちゃっているの。
鼓くんは、ため息をついた後、私から手を放した。
「食べていいけど、あと一時間はここにいなよ。鈴蘭の毒の症状がでるなら、そのくらいだからさ」
「はーい」
もう一個ラスクを食べる。
「やっぱり、食べて正解だよ。残すなんて、もったいない」
影谷くんに笑いかけると、彼は嬉しそうで、恥ずかしそうだった。
頬は赤く、薔薇色に染まっている。
「花咲さんは優しいね、僕、人間になっちゃうかも」
その顔は、恋しているみたいだった。
いつも可憐な影谷くんが、いつもよりキラキラ輝いて見えた。
だから、私の心臓もドキドキしてしまう。
「私以外にも、同じ事する人きっといるよ」
「でも、今、僕の作ったものを食べてくれたのは、花咲さんだから……」
私を見つめる目は、うるうるとキラキラが混じっていた。
これは、もしかして……
なんて返答すればいいのか分からなくなる。
「オレも、恋するなら花咲が良いなー」
「鼓くんまで……」
便乗しなくて良いのに。
「冗談じゃないよー。花咲みたいな、優しくてほっとけない子がいいの」
太陽とはちょっと違う、優しい笑顔。
それが真剣さを感じさせる。
もっと心臓がドキドキした。
あと、一時間、この二人といるの緊張するな。
***
チョコを食べてから、二時間以上たっても何もなかったので帰ることになる。
生徒会寮を出て、改めて二人に向き合う。
「遅くまでお邪魔して、ごめんね。いっぱいお話できて、よかった」
「ううん。僕もいっぱいお話できてよかったよ」
影谷くんは、ふわっと微笑む。
その笑顔が、昨日よりも素敵に見えるのは気のせいなのかな。
「何かあったら、すぐに連絡してね! 気をつけて帰るんだよー」
鼓くんは、いつも通りだ。
「また明日、会えるの楽しみにしてる!」
……たぶんね。
「うん。また、明日。また、一緒に料理しようね」
バイバイって、手を振って別れた。
トラブルもあったり、ドキドキすることもあったけど、楽しかったな。



