「大丈夫、ちょっと暑いとこ触っちゃって」
ボウルを温めていた火を止め、蛇口から水を出して、流水で腕を冷やす。
天板に触れたところは、ちょっと赤くなっていて、水で冷やすと痛い。
いやー、やらかしちゃった。
ボウルの方も作り直しかな?
「ちょ、火傷してるじゃん! 花咲、手触るよ!」
心配して見にきた鼓くんは、火傷を見つけると私の手を取る。
「え、なに?」
火傷といえば、流水で冷やすだと思っていたけど、間違ってた?
「痛かったら、ごめん」
私が不思議に思っていると、鼓くんは火傷した部分を優しく撫でる。
「痛いの痛いの、飛んでいけ」
いつも元気な鼓くんとは思えない、優しい声。
「痛いの痛いの、飛んでいけ」
……これ、おまじないだけど、鼓くん本気で信じているのかな?
本人には言いづらくて、されるがままにしていると、火傷してじんわりと痛かった腕から、少しずつ痛みがひかれていく。
「痛いの痛いの、飛んでいけ」
鼓くんは、もう何度か優しく撫でると、
「よーし、いい感じだ!」
いつもみたいに明るく言って、私の腕から手を離す。
すると、私の腕から火傷で出来た赤みも、痛みも消えていた。
「え、なんで? え?」
確かに火傷して、痛かったのになんで、後も形も無かったかのように消えているの⁉︎
「鼓くん、何をしたの?」
私が困惑していると、鼓くんは自慢げに言った。
「これ、オレの空を飛ぶ以外のもう一つの特殊能力! 癒やしの力を持ってるんだ。もう、痛くない?」
「うん、痛くないよ」
痛くないのが不思議で、火傷した部分を何度も触ってしまう。
「本当になんも無いよ、ありがとう。……でも、特殊能力って使ったら副作用とか無いの?」
こんなすごい能力。
タダで使えるのか、心配になる。
「無いよ、何にも無い! 浮く方は、自分の意思関係なしに浮いちゃうデメリットがあるけど、こっちは何にも無いよ!」
それなら良かった。
でも、前も鼓くんの特殊能力で助けられて、今日お礼にチョコを作ろうと思っていたのに。
「鼓くんに助けてもらってばっかりだね、私。お礼が終わんないや」
申し訳ないくらい、いつも助けられている。
「お礼なんて、いいんだよ! 花咲は、大事な生徒会の仲間だもん。困ってたら助けるよ!」
鼓くんは、パッと明るい笑顔で笑う。
悩みとか申し訳なさとかを吹き飛ばしちゃうくらい素敵な笑顔。
「ありがとう」
優しくて、明るい鼓くんは太陽みたいな人だ。



