ゆっくり扉を開ける。
扉は重いが、スムーズに開いた。
ふわり、さっきより甘い香りが飛んでくる。
一歩、足を踏み入れる。
「凄い……」
扉の先、そこには春があった。
先ほどまでの場所とは違って、ここは観賞用なのか、いくつもの花が花壇に植えられ、生き生きと咲いている。
薔薇
チューリップ
ひまわり
カーネーション
ラベンダー
あじさい
コスモス
つつじ
温室の中だけど、桜の木や藤棚も有る。
知っている花から知らない花まで、右も左も沢山植えられているけど、花、一本一本が主役なのか、ひまわりや、チューリップが一本だけで植えられている。
ちょっと不思議な植え方の温室だ。それに……
「ひまわりって、今は時期じゃないのに、こんなに咲くものなんだ」
私、花咲 桜って名前だけど、今まで花に興味は無かったので、初めて知った。
「どれも、綺麗だな」
出るためには、扉を探さなきゃいけないのに、ここに有るどの花も美しく咲いているから、花に目がいってしまう。
ゆっくりと歩いて、桜の木に辿り着いた時。
「奇跡だ!」
人の声が聞こえて、振り返る。
誰か居るの?
これで、ここから出る方法を聞ける!
振り向いた先にいたのは、淡い青紫の髪の男だった。
大きな声で喋りながら、ずんずんと歩いてくる。
「そのピンクの髪、正に桜! だけど、こんなところで生まれるなんて! しかも、レディ!? もっと奇跡だ!」
「え、なに?」
この人は、何の話をしているの?
うちの学校の白い制服を着ているって事は、学校の生徒だろうけど……
近づいてくるから、男の人の顔がよく見える。
ふわっと、さらっと、なびく淡めの青紫色の髪に、ぱっちりとした青い目、スッと通った鼻と、かたちの良い口。
華やかで、今まで出会った人の中で一番のイケメン。
絵本で描かれる王子様みたい。
見惚れるようにその顔を見ていると、その男は両腕を広げ、私を抱きしめた。
甘く華やかな、薔薇みたいな香りが私を包み込む。



