そして、マラソン大会の日。

コースは学園とその周辺で、距離は男子は八km。女子は五kmで、三十分から四十分が目安らしい。

まず男子が、二分間隔三クラスずつスタートしていき、最後の男子がスタートした十分後に、今度は女子が、二分間隔三クラスずつスタートする。


私は一年一組だから、女子組始まっての一番のスタートだ。

一緒に走るような子も居ないから、一人で走る。


だらだら歩いている三年生男子を抜かしたりして、半分過ぎたかなってくらいの時、声をかけられた。


「あの、生徒会の人ですよね!」


そこに居たのは、一人の女子だった。
道の分岐点でコースを間違えない様に居る、体育委員会の子だ。

いきなり生徒会の人って言われたのは驚いたけど、有名だから知っているか。


「どうかしたんですか?」


近づいて、話しかける。

彼女は慌てているようで、早口だった。


「怪我をしている子の様子を見ていたら、その間に道を外れちゃった子が居て! 急いで追って欲しいんです!」

「えっ、コース外れちゃったんですか⁉︎」

「本当は私が追ったら良かったけど、そしたら他の人も間違えちゃうかもって思ったら動けなくて! そしたら、生徒会の人! 頼れるのは貴方しかいないんです!」


頼れるのは、生徒会の私だけ……


「ついさっきの事なので、急いだら間に合います。追いかけてください!」

「わ、分りました!」

「あの木のとこを右に行きました!」


彼女が指を差す方に走り、木のとこまで行って右を見ると、うちのジャージを着た女の子がいた。


「待ってください!」


声をかけるけど、遠いのか聞こえていないみたいで、前の子は止らない。

追いつこうと必死に走るけど、前の人、足速い!


私、そんなに早くないのに!


右に左に曲がっていく彼女を追いかける。

最初のうちは追いつけていたけど、いつの間にか見失ってしまった。


そして、問題はもう一つ。


「どうしよう」


……ここは、どこ?


何回も曲がったせいで、道を憶えていない。

結構遠くまで来たのか、学校は見えない。

引っ越して来たばっかだから、土地勘も無い。


完全に迷子だ。