鍵を開け、生徒会室に入る。

千代田くんは今も、青い顔をしていた。


「強く言っちゃった」


その声は、物凄く悲しそうで絶望に満ちていた。


「気にしなくても大丈夫だよ。もし、これから彼女が悪い事言わなくなったら私も助かるし、彼女にとっても良い事じゃん」


慰めの言葉を言っても、彼は頷かない。


「お昼食べようよ。千代田くんもお弁当?」


生徒会室に入ったから手を引くのをやめると、千代田くんは立ち止まってしまった。

彼の心情が彼を動かなくさせていた。

私は、千代田くんの前に立ち、前髪に隠れた彼の目をのぞき込んで、目を合わせた。


「千代田くん。千代田くんは今言ってしまった事を後悔しているかもしれないけど、私は千代田くんがああ言ってくれて嬉しかったよ。ありがとう」


嘘偽りのない私の気持ち。


これで、少しは心が軽くなれば良いのに。


そう願いを込めて。



千代田くんは、一度目を閉じると、また開き、今度は彼から目を合わせ、私の両手を握った。


「今度は、後悔しない」

「そんなに強く言わなくても良いんだよ」


千代田くんは首を横に振る。


「決めたから、いいんだ。俺は花咲を守りたい」



その目は、さっきまでとは全然違う。
信念のこもった目。


「俺の事を拒否しないでくれた花咲が、傷つかなくて良いように俺は守る。そのための言葉は後悔したくないんだ」


その眼差しを向けられると、恋愛はしないって思っているのに、流石にドキドキしちゃう。


「本気だよ」