翌日。
登校して、朝一番。
私は、昨日渡された鍵を使って生徒会室を開けようとして、
あれ、もう開いている。
誰か居るのかな?
なんて考えながら扉を開けると、中には会長がいた。
「おはようございます。会長」
「おはよう、桜ちゃん」
花が咲く様に笑う、会長の笑顔は朝から眩しい。
会長は、自分の机で何か作業をしているようだった。
私が近づくと、手を止める。
「何か、仕事しているんですか?」
「いいや、生徒会には関係ないことだよ。それより桜ちゃんは、どうしてこんな時間に生徒会室に来たんだい?」
「朝のHRが始まるまでの時間潰しです」
「教室じゃなくて、ここで? まだ、いじめが有るのかい?」
会長は、心配そうに尋ねる。
「いえ、あの子達は停学になったし、いじめとかはないんですけど。遠巻きにはされているから、あんまり居心地良くなくて」
「そうか」
会長が深刻そうに頷くから、慌てて否定する。
「別にそんな深刻に思わなくても良いですよ。一人だって、嫌いじゃないですから」
それでも会長は心配そうだった。
「そうかい。でも、何か困ったことが有ったら、すぐに言うんだよ。キミは、オレの大事な人なんだから」
優しい声だった。
愛情って言うのかな、感情がこもった声。
その声を向けられたのを、嬉しく思ってしまった。
胸がじんわりと温かくなる。
大事な人、それって……
「どういう意味で大事な人なんです?」
聞かない方が良いのかもしれないのに、聞いてしまった。
なんて言われたいのかは、自分でも分らないまま。
会長は、にっこり笑う。
「もちろん、いつか奇跡を起こす相手としてさ」
ムッとしてしまって、望んでたのが、この答えじゃない事が分った。
「ふざけてます?」
「まさか、ふざけてないよ」
そういう割には楽しそうに笑っている。
別に良いんだけど、昨日、あんな話をしたけど会長は、本気で私と奇跡をおこしたいわけではないのかな。
助かるからいいけどね。



