鹿島先輩と話すので休憩時間を使っちゃったから、千代田くんとは生徒会の仕事が終わったら話そうと思っていたけど。
「桜ちゃん。キミは、今日の仕事は終わりにして帰っていいよ」
「え?」
一人だけ先に、帰宅宣言が出ちゃった。
「オレらは寮で近いから、もう少し遅くても良いけれど、桜ちゃんは、これ以上遅いと帰っている途中に真っ暗になってしまうだろう」
確かに今は日が短いし、帰っている途中に暗くなっちゃうかも。
でも今は、その優しさより千代田くんと話したい!
どうしよう……
千代田くんと話したいって気持ち、分かってくれないかな
期待を込めて鹿島先輩を見るけど、
「会長の言う通りです。花咲さん、帰りの準備をなさい」
「はい」
鹿島先輩にも言われてしまったので片付け始める。
明日、話すか。
そう考えながら、準備を終え、生徒会室を出ようとして、
「千代田、転入したばっかりの彼女が迷子になってはいけません。玄関まで送ってあげなさい」
鹿島先輩が、サポートしてくれた。
千代田くんは頷いて、立ち上がる。
ありがとう、鹿島先輩!
「それじゃあ、先に失礼します。また明日」
生徒会室から充分離れたところで、千代田くんに話しかける。
「鹿島先輩に聞いたよ。千代田くんの特殊能力のこと」
千代田くんは何も言わない。
「特殊能力が嫌だから、人になりたいの?」
千代田くんは、頷いた。
やっぱり、そうなんだ。
「相手が私なのは……なんでだ? 鹿島先輩に聞くの忘れてた」
いやでも、鹿島先輩も分からないか。
花の精なのを知っている人が良い理由。
私が考えていると、千代田くんは気まずそうに言った。
「花咲は、いつか俺の能力を知ると思ったから……」
「だから、良かったんだ」
特殊能力が呪いの言葉なのを知られたかったんだ。
確かに、知られた方が愛し合うのは楽かも。
「すまない」
「別に怒ってないよ。千代田くんが人になりたい気持ちは分るし、その時、自分の事を知っている人は都合が良いなって自分でも思う」
千代田くんは、悲しそうな顔をする。
そんな顔をさせたいわけじゃなかっただけどな。
私が立ち止まると、彼も立ち止まる。
「だから、千代田くんの力になりたい気持ちはあるんだけどね、私、恋愛したくないの」



