「それで、話したい事とは?」
「その……千代田くんに、人になりたいって言われたんです」
事実なんだけど、
告白されたよ!
って言っているみたいで恥ずかしい。
「なるほど」
鹿島先輩は、驚く事なく頷いた。
「だから、彼が人になりたい理由を知りたいんです。本人から聞くのが1番なんですけど難しくて、鹿島先輩に聞いてって言ってくれたんです」
「分かりました。本人が言ったなら、話をしましょう。ですが、本人の心情までは、正しく説明できる訳ではありませんよ」
「それでも、お願いします」
鹿島先輩は、頷いた。
「花咲さんは、私達花の精に特殊能力が有る事は、会長から聞きましたね?」
「はい」
「千代田は、その特殊能力を疎ましく思っています。彼の特殊能力は、呪いの言葉。彼の言った言葉が現実のものとなります」
「言葉が現実になる?」
「千代田が、自分の特殊能力を分っていなかった頃の話です。
彼が「お前、山田好きだろ」と言うと、言われた人は山田を急に好きになり、
彼が「お前、馬鹿だなー」って言うと、言われた生徒は、学年二十位の成績が二百位まで落ちました」
それは、酷い。
好きになったのは、千代田くんの言葉で意識したとかかもしれないけど、成績がそんなにも落ちちゃうなんて。
「どちらも偶然の可能性も勿論有ります。ですが、クロユリの伝説に呪いが関係する事も有って、現在はそれが彼の特殊能力だと思っています」
そんな経験が有ったなら、千代田くんが喋らない事に納得するし、無理に喋れとは言えない。
「千代田が言った言葉全てが呪いになるわけでは無いですが、どこが呪いになるか本人も分らないので、あまり喋らないんです」
……さっき、喋ってって言ったの悪いことしちゃった。
「千代田が喋らないのは、周りに呪いを振りまきたくないという彼の気持ちです。コミュニケーションは取りづらいでしょうが」
優しい人なんだな、千代田くん。
「教えてくれてありがとうございます」
「いえ、千代田が聞いても良いと言ったことですから。……この話を聞いて、花咲さんは千代田と愛し合いますか?」
それは……
千代田くんのことは、生きづらそう、大変だなと思う。
だけど、今のは私には……
「はい、とは言えないです。私は、愛し合うという結果のために誰かを愛することは、まだできないです」
鹿島先輩は、優しく微笑む。
「貴方が誠実な人で良かった。そのままの貴方で、千代田と接してください」
「はい」



