千代田くんと廊下に出る。
暖房の効いていた生徒会室と違って、廊下は少し寒かった。
「それで、何かな? 話したいことって」
千代田くんに声をかけると、彼は私の正面に立ち、じっと私を見た。
長い前髪からのぞく、形の良い赤みがかった黒い目と、薄い口。
会長とは雰囲気違うけど、やっぱり千代田くんもイケメン。
まっすぐ見つめられると、まるで告白されるみたいで、ドキドキする。
さっきも、会長プロポーズみたいって思って、全然そんな事なかったのに。
千代田くんが話し始めるのを待っていると、彼はゆっくりと口を開いた。
「突然だけど」
彼は、驚くほど真剣に私を見つめている。
「オレの事、人にして欲しい」
「……人に?」
聞き間違えかと思ったけど、千代田くんは大きく頷いた。
人にして欲しい……
「それって、さっき会長が言っていた奇跡の事?」
「そう」
彼は、しっかりと頷く。
「千代田くんも奇跡、起こしたいの?」
少し考えたのち、首を横に傾けられる。
肯定でも、否定でもない?
どういう事なんだろう?
「うーんと、他の質問しても良い?」
千代田くんは、頷いた。
「じゃあ、その、千代田くんは私の事、好きなの?」
自分で言ってて、ちょっと恥ずかしい。
でも、愛し合ったら人間になれるって事は、そういう事……私の事を愛するって事じゃん。
ドキドキしながら、どう返されるか待つけど、千代田くんはずっと微妙な顔のままだった。
頷くことも、首を横に振ることも、傾ける事も無い。
「もう、ハッキリ言って欲しいな」
否定か肯定して欲しいのに、千代田くんは何も言わず気まずそうな顔をする。
もう!



