「会長、奇跡が起きるのが会長の特殊能力だと決まっているわけでも、本当に愛し合うことで人になれるかもわからないんでしょう?」
会長はしっかりと頷いた。
「ああ、そうだよ」
「それなのに、奇跡が起きなかったから、心から愛していないの? とか、聞いたんですね」
会長は悪びれることも、後悔する様子もなく、言う。
「駄目だったかな? オレは彼女を愛しているから、奇跡は起きると思ったんだ」
「駄目に決まっているじゃないですか。会長、一生人になれなさそうですね」
今の会長が、誰かと愛し合えるとは思わない。
そもそも、会長は本当に彼女を愛していたのかな。
「なんでだい?」
会長は、本当に分らなそうに首を傾げる。
これは、会長の個性?
それとも、花の精ってみんなこんな感じなのかな?
「人の心ないですもん。そんなんじゃ、奇跡起こせないですよ」
「奇跡を起こせない!?」
ショックを受けたのか、会長は目をぱちぱちさせると、黙ってしまう。
これを機に、人の心ってのを考えるかな会長。
そうすれば、顔は悪く無いし、誰かと愛し合うことは出来るんだろうな……
「よし分った!」
何か考えていたのか、黙っていた会長は大きく声をあげると、改めて私の手を握った。
「何が分ったんです?」
「オレには人の心が無いのなら、桜ちゃんがオレに人の心を与えてくれないか?」
会長は、私の手を取ると、甲にそっとキスをした。
あー、もう!



