「さいってい!」


学校の中庭、女の子はそう言って、薔薇の花束を振りまわす。

――バサン!

大きな音を立て、赤い薔薇の花束は、人の顔を殴るのに使われた。


薔薇の花びらは、衝撃で散らばり、ひらひらと舞い落ちる。

殴るのに使われた花束は、女の子が手を離したことで、その場に捨て置かれた。


女の子が立ち去ったのを見て、私は、膝を付いて花束と花びらを拾う人に近づく。


「何やっているんですか?」


私が声をかけると、花びらを拾っていた人、生徒会長は左側が赤くなった顔をあげる。


「見ていたのかい?」


いつものように笑いかけてくるけど、白い肌に大きく赤い痕がついていて痛々しい。


「はい。お昼、生徒会室で食べさせてもらって、教室に戻っていたところです。まさかの光景で驚きました」


いつもは教室でお弁当を食べているけど、居心地が悪いから困っていた所、生徒会室を使っていいよと昨日許可をもらったので、使わせてもらっていた。

生徒会入って二日目にして、誰も居ない生徒会室を使うのは気が引けたけど、久しぶりに周りの目が気にならなくて良かった。


「それは、恥ずかしいとこを見られてしまったね。お昼は美味しかったかな?」


花びらを集め終わり、生徒会長は立ち上がる。

白い制服に抱かれた赤い薔薇。

会長の華やかな顔立ちには、よく似合っていた。


「美味しかったですよ。……さっきの方、彼女ですか?」

「ついさっきまではね。今はもう振られてしまったよ」


……会長、彼女居たんだ。


イケメンだから、彼女が居たってなんにも可笑しくないけど、何故か胸がもやっとした。


「そうなんですね。ちなみに、なんで振られたんです?」

「うーんとだね、キミは、本当にオレの事を愛しているのかい? と聞いたら、振られてしまったよ」


落ち込んだ様に肩を落とすけど。


「それは振られますよ」


彼氏にそんな事を言われるなんて、絶対嫌。

今まで彼氏が出来た事の無い私にだって分る。

好きであれば、好きであるほど悲しいし、怒ってしまうだろう。


「なんでそんなこと言っちゃったんですか?」


会長は、悲しそうに呟いた。


「奇跡が起きなかったんだ」

「はぁ」


奇跡? なんか怪しい奴?


私の反応が悪いのを見て、会長は苦笑したする。


「そんな顔をしないでくれ。まだ、桜ちゃんには話してない、オレ達の秘密が関係しているんだ。放課後、生徒会室で話すよ」