「えーっと、ここかな?」
地図を確認しながら辿り着いた先には、オシャレなデザインの木枠で囲まれたガラスの扉が有る。
その扉を有する建物は、背の高い冬でも葉っぱのついた木と積もった雪でよく見えないけど、大きそう。
手書きの地図が同封されていた手紙には、
『この建物の中で待っています』って書いてあるけど……入って大丈夫かな?
ガラスの部分から中を覗くと、中はやっぱり広そうで、沢山の花が置いてある。
温室みたいだ。
見える範囲では人は居ないけど、背の高い植物も有って奥までは見えないから、居ないとは言いきれない。
真鍮製の、縦に長いドアハンドルを掴む。
鍵はかかっていないみたいで、ドアはうるさい音を立てることも無く、スムーズに開いた。
ふわり、甘い香りが部屋の中から漂って来る。
一歩、二歩、土の上から、温室の石畳の床に足を踏み入れる。
外は寒かったけど、中は温度管理されているのか暖かい。
「あの、手紙で呼ばれた花咲ですけど」
声をかけながら中に入るが、何の反応も無い。
広いみたいだし、声聞こえ無いのかな?
それともまだ居ない?
呼び出された時刻は、一時ちょうど。
ちゃんと時間確認して来たんだけどな。
ドアから手を離し、三歩、四歩。もっと奥に進む。
「すみませーん。誰か居ませんか?」
そうして、ドアから充分離れた所で、
ーーガチャ、ガチャガチャガチャチャ
背後で大きな音がした。
振り返ると、ドアの辺りに人がいる。
「あの!」
慌ててドアの元へ戻ると、ガラス越しに五人の女の子が見える。
そのうち、三人はしゃがんでドアハンドルの辺りで何かをしている様だった。
この子達は……同じクラスの子だけど、すごく嫌な予感がする。
「あの、何しているんですか?」
彼女たちに聞きながら、ドアノブを掴み、開けようとするが開かない。
ガチャリ、と金属が擦れる様な音がしただけだ。
え、閉じ込められた?
嫌な予感、的中だ!
「止めてください。開けて!」
慌てて、ガラス越しに五人の女の子達に話しかけるけど、彼女達は慌てる私を見て、助けるどころか馬鹿にする。
「騙されたのよ、貴方は! ラブレターで呼ばれて、のこのこ行くなんて、ほんとモテたいのね!」
「そこ、本当は立ち入り禁止なの。入ったら、退学! さっさと学校から、いなくなっちゃえ!」
女の子達は酷いことを言うと、キャッキャっと笑いながら、ドアから離れていく。
「ちょっと、開けて!」
去って行く後ろ姿に声をかけるが、彼女達は止る事は無く、いつしか見えなくなってしまった。



