神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

――――――…一方、その頃。

復帰後、最初の任務に失敗した僕は。

現在、『アメノミコト』本部の地下にある、地下牢に閉じ込められていた。

拷問の為にも使われるこの地下牢は、狭く、天井が低く、むき出しのコンクリートに囲まれている。

椅子も、机も、ベッドすらない。

だから僕は、そのむき出しのコンクリートの上に、じかに正座していた。

太い鉄格子の柵は、何重にも鍵と鎖がかけられ、絶対にこちらからは開けられない。

地下牢には照明がなく、深い暗闇に包まれていた。

何の物音もしない。誰の声も聞こえない。

ただ、常に何処からか血の匂いがした。

かつて、この地下牢で殺された者達の血だろう。

任務に失敗してしまったが故に、僕はこんな不気味な場所に閉じ込められているのだ。

…いや、任務に失敗した…というか、正しくは。

ターゲットを見逃そうとしたところを、別の暗殺者に先を越されて、殺されてしまったのだ。

未だに、あの親子に申し訳ない。

僕が騙し討ちしたように思ってるだろうな。

「助けてくれるって言ったじゃないか」と、憎んでいるに違いない…。

…だけど。

僕も遠からず、あちら側に行くだろう。

僕の知る限り、この地下牢に閉じ込められた者に、未来はない。

ここに閉じ込められた時点で、僕の運命は決まっている。

今や僕につけられた烙印は、「裏切り者」だけに留まらない。

裏切り者の上、今度は「任務に失敗した役立たず」の烙印まで押されてしまった。

裏切り者の上に役立たず…。…『アメノミコト』の暗殺者としては、生きている価値はないね。

僕は処分される。間違いない。

それは、別に構わなかった。怖くもなかった。

人の命を奪い続けてきた、暗殺者の末路なんてこんなものだ。

精々、死んで、僕が殺したすべての人に謝ってこよう。

そのくらいの気持ちでいた。




…だけど。

「…少しは反省しましたか?先輩」

暗闇の地下牢に、人の気配がやって来た。

…あの時。

僕が、武器の密売をしていた親子を見逃そうとした時。

背後から迫ってきて、あの親子を殺した…。

僕を先輩と呼ぶ、黒いフードを被って、顔を隠した暗殺者の彼だった。