恋愛日和〜真逆の二人が惹かれ合うまで〜

「日和。はい、コーヒー」

日和のマグカップをローテーブルに置いて、日向は隣に腰を下ろす。

「ありがとう、日向さん」

パブリッシング事業部に異動になって2ヶ月が経ち、日和はすっかり業務にも慣れたようだった。
夜になるとソファに座り、スケッチブックに思いつくままにイラストやデザインを描いている日和を、日向は優しく見守る。

「日和はやっぱりクリエイティブな仕事の方が向いてるな」
「そう?確かに好きなんだけど、仕事となるとそれだけじゃだめで。求められるものと自分が好きなものは違うから、その辺りのすり合わせが難しいの。だから無事に納期が終わると、こうやってバーッて自分の好きなものを思う存分描きたくなっちゃう」

そう言いながら、自分が作ったフラワーアレンジメントをデッサンしている。

「ふうん。フラワーアレンジの腕前もめっきり上達したよな。これも大作だし、ちょっと崩した感じがセンスいい」
「えへへ、望美ちゃんにも褒められちゃった。私のデザインを見て、これ作りたい!って言ってくれたり」
「そっか。じゃあアイデアの参考に、またフラワーセンターへ行く?」
「いいの?やった!日向さんとデートだ」

無邪気にはしゃぐ日和は、可愛らしくて愛おしい。
日向は日和を抱き寄せて、甘いキスをする。
途端に日和はトロンと顔をとろけさせた。

「日和、好きだよ」
「日向さん。私も、大好き」

互いの耳元でささやいて、何度もキスを繰り返す。

「日和。俺はずっと女の子の気持ちが分からなかった。けど日和を知ってからは違う。こんなにも可愛くて健気で、無邪気で心が澄んでいて……。日和がいてくれるだけで世界が彩り豊かになるんだ。日和が教えてくれた、世界はこんなにも輝いてるんだって」
「日向さん……。いつもそばにいてくれてありがとう。寂しくて心細かった私をずっと支えてくれるあなたのことが、私は大好きになりました。私に寄り添ってくれて、私の心を大切にしてくれて、私の夢も叶えてくれた。日向さん、これからもあなたのそばにいさせてください」
「もちろんだ。俺は絶対に日和の手を離さない」
「いつか年を取って、おばあちゃんになっても?」
「ああ、どんな日和も可愛いに決まってる。どんな方程式でも、どんな証明問題でも答えは同じだ。日和だけが俺のたった一人の愛する人だってな」

ふふっと日和は柔らかい笑みを見せた。

「日和、おばあちゃんの前に可愛いママにならないか?」
「え?」

日和は驚いたように顔を上げてから、うん!と頷く。

「私も、かっこいいパパの日向さんを見てみたい。絶対に惚れ直しちゃう」
「ははっ、俺もだ。日和は優しくていいお母さんになるだろうな」
「日向さんもね。でも子どもはどっちに似るかな?私と日向さん、タイプが違うもんね」
「確かに。スマホをぐるぐる回したら、日和似だな」
「絵が壊滅的に下手だったら、日向さん似ね」
「なんだと?」

あはは!と日和は楽しそうに笑う。

「じゃあ日和、たくさん子ども作ろう」
「そうだね。色んな性格の子ども達、楽しみだね」
「よし!そうと決まれば早速な」
「は?え、ちょっと!日向さん!」

日和を抱き上げて寝室へと向かう日向に、日和は真っ赤になってじたばたする。

「日和、今のうちだぞ?子どもがいたらこんなにたっぷり二人の時間は取れない。だから思う存分、今は日和を愛させてくれ」
「……はい」

日和は頬を赤く染めたまま小さく頷いた。

「よろしい、可愛い俺の奥さん」

ベッドにそっと寝かせると、日向は優しく日和の頬に手を添えて瞳を覗き込む。

「日和、これからもずっと俺のそばで笑ってて。俺が必ず日和を幸せにするから」
「日向さん……。あなたがそばにいてくれるだけで、私はとっても幸せです。ずっとあなただけが大好きよ」
「俺もだ。日和だけを生涯愛し続ける。やっと見つけた最愛の人だから」

甘いキスはほんの始まり。
二人は互いの愛に包まれながら抱きしめ合う。

地図が読めない、絵の上手な女の子と、数学が得意で絵が苦手な男の子。
計算が好きで絵が苦手な女の子。
機械に強くて絵の上手な男の子。

やがて4人の可愛い子ども達に囲まれながら、日向と日和はいつまでも、賑やかで明るく愛しい日々を送っていた。

(完)