「……え、佐野さん?」
「電話はするな。俺が代わりにメッセージを打つから」
「あ、はい。ありがとうございます」
「それから俺がさっき言おうとしたこと、分かった?」
「えっと、結婚を決めた相手に好きだと告げたら困らせるに決まってるってお話ですよね?」
「そう。それはつまり?」
「つまり?うーん、私がかずくんに好きだと言ったら困らせちゃうぞ、やめておけってことですか?」
「違う。俺がお前を好きだってこと」
…………は?と、日和は腕の中で固まった。
「ごめんなさい。私、頭の中が混乱しちゃって……」
「分かるまで言う。俺はお前が好きだ」
「ええ!?どういうことですか?」
「じゃあ、もっとちゃんと分からせよう」
日向は日和を抱く手を緩めると、日和の頬に手を当ててじっと瞳を見つめる。
「最初はまったく手に負えなくて、理解出来なかった。だけどいつの間にか、そんなお前にどうしようもなく惹かれていった。俺にはないものをたくさん持っていて、俺の知らなかった世界を見せてくれる。日和……、お前のことが大好きだ」
日和は息を呑んで顔を真っ赤に染めた。
「スマホをぐるぐる回すお前も、フリック入力出来なくてたどたどしい文章を打つお前も、名前のない美味しい料理を作ってくれるお前も、花を丁寧に美しく生けるお前も……。どんな日和も愛おしくて、どんどん惹かれていく。もう認めざるを得ない。俺はお前にべた惚れしている」
信じられないとばかりに、日和は目を見張る。
「ま、まさか、そんなこと。だって佐野さんは、私のこと変な人種だと思ってましたよね?考え方もやることも全部が違う、分かり合えない真逆のタイプだって」
「それは否定出来ない。最初はそうだった」
「それが、どうして?」
「分からん」
「わ、分からん?」
「恋は理屈じゃないらしい」
真顔で答えると、日和はポカンとしたまま見上げてきた。
「理路整然と恋の思考回路を説明しないとだめか?」
「いえ、結構です。そういうのは苦手なので」
「なら、お前の返事を聞かせてほしい」
「えっ!ちょっと待ってください。頭の中を整理しますので」
「必要ない。心に聞く」
え?と顔を上げた日和の頬に手を添え、日向はゆっくりと顔を寄せる。
そっと左の頬に口づけてから身体を離すと、日和は赤い顔のまま目を潤ませた。
うつむく日和の顔を覗き込んで、優しく尋ねる。
「日和?嫌だった?」
「……ううん」
「じゃあ、もう一回顔上げて?」
「無理!恥ずかしくて」
「ふっ、可愛いな。じゃあ目を閉じてろ」
そう言って日和の頬を手のひらで包み込むと、そのまま上を向かせる。
目が合った途端、日和はギュッとまぶたを閉じた。
日向はそんな日和にクスッと笑みをこぼし、今度は右の頬に口づける。
「好きだ、日和」
耳元でささやき、何度も頬に口づけた。
だんだん日和の身体から力が抜けていく。
「日和、目を開けて」
「え……?」
日向は日和の潤んだ瞳をじっと見つめ、視線をそらすのを許さない。
「キスしていい?」
親指で日和の唇をそっとなぞると、日和は更に頬を赤く染め、うるうると涙で目を潤ませた。
「嫌なら引っ叩いてでも止めろ」
そう告げると、ゆっくり顔を寄せる。
鼻先が触れそうなほど近くまで来ると、もう一度日和の瞳を覗き込んだ。
いい?と目で尋ねると、日和は涙をいっぱい溜めた目を閉じる。
そっと優しく、想いを込めて、日向は日和にキスをした。
ん、と小さく日和がこぼした声が、日向の身体を一気に熱くさせる。
ギュッと日和を胸に抱きしめ、何度もキスを繰り返した。
もう何も考えられない。
誰にも止められない。
日向は気持ちに突き動かされるままに、日和を胸にかき抱き、唇を奪った。
ようやく身体を離し、互いにふっと息をつく。
コツンとおでことおでこを合わせた。
「日和の返事、心の中に聞こえてきた」
「……なんて?」
「俺のこと、大好きだって」
すると日和は目をぱちくりさせる。
「違った?」
いたずらっぽく尋ねると、日和は照れながら可愛い笑顔を見せた。
「ううん、合ってる」
そう言って日向の首に腕を回し、ギュッと抱きつく。
「私もあなたのことが大好きです。ぷんぷん怒ってる時も、ご飯をパクパク食べてくれる時も、フラワーセンターに連れて行ってくれた時も、素敵な誕生日プレゼントをくれた時も、どんなあなたも大好きなの」
「日和……」
日向は日和を抱きしめて、チュッと甘いキスを贈る。
「ぷんぷん怒ってる時ってなんだ?俺、そんな時あったか?」
「うん、いつも怒ってるよ。スマホぐるぐる回すなーって。でも怒ってる顔が面白いの」
「なんだと!?」
「ほらね、また怒ってる」
くすくす笑う日和に、日向はやれやれとため息をつく。
そしてまた優しくキスをした。
「日和」
「なあに?」
「奥田先生に返信しよう。『結婚式には喜んで出席します。追伸。私も大好きな彼氏が出来ました』って」
日和はキョトンとしてから、おかしそうに笑い出す。
「ふふっ、うん。そう送ってね」
「ああ」
二人はいつまでも抱きしめ合い、笑い合ってキスをした。
「電話はするな。俺が代わりにメッセージを打つから」
「あ、はい。ありがとうございます」
「それから俺がさっき言おうとしたこと、分かった?」
「えっと、結婚を決めた相手に好きだと告げたら困らせるに決まってるってお話ですよね?」
「そう。それはつまり?」
「つまり?うーん、私がかずくんに好きだと言ったら困らせちゃうぞ、やめておけってことですか?」
「違う。俺がお前を好きだってこと」
…………は?と、日和は腕の中で固まった。
「ごめんなさい。私、頭の中が混乱しちゃって……」
「分かるまで言う。俺はお前が好きだ」
「ええ!?どういうことですか?」
「じゃあ、もっとちゃんと分からせよう」
日向は日和を抱く手を緩めると、日和の頬に手を当ててじっと瞳を見つめる。
「最初はまったく手に負えなくて、理解出来なかった。だけどいつの間にか、そんなお前にどうしようもなく惹かれていった。俺にはないものをたくさん持っていて、俺の知らなかった世界を見せてくれる。日和……、お前のことが大好きだ」
日和は息を呑んで顔を真っ赤に染めた。
「スマホをぐるぐる回すお前も、フリック入力出来なくてたどたどしい文章を打つお前も、名前のない美味しい料理を作ってくれるお前も、花を丁寧に美しく生けるお前も……。どんな日和も愛おしくて、どんどん惹かれていく。もう認めざるを得ない。俺はお前にべた惚れしている」
信じられないとばかりに、日和は目を見張る。
「ま、まさか、そんなこと。だって佐野さんは、私のこと変な人種だと思ってましたよね?考え方もやることも全部が違う、分かり合えない真逆のタイプだって」
「それは否定出来ない。最初はそうだった」
「それが、どうして?」
「分からん」
「わ、分からん?」
「恋は理屈じゃないらしい」
真顔で答えると、日和はポカンとしたまま見上げてきた。
「理路整然と恋の思考回路を説明しないとだめか?」
「いえ、結構です。そういうのは苦手なので」
「なら、お前の返事を聞かせてほしい」
「えっ!ちょっと待ってください。頭の中を整理しますので」
「必要ない。心に聞く」
え?と顔を上げた日和の頬に手を添え、日向はゆっくりと顔を寄せる。
そっと左の頬に口づけてから身体を離すと、日和は赤い顔のまま目を潤ませた。
うつむく日和の顔を覗き込んで、優しく尋ねる。
「日和?嫌だった?」
「……ううん」
「じゃあ、もう一回顔上げて?」
「無理!恥ずかしくて」
「ふっ、可愛いな。じゃあ目を閉じてろ」
そう言って日和の頬を手のひらで包み込むと、そのまま上を向かせる。
目が合った途端、日和はギュッとまぶたを閉じた。
日向はそんな日和にクスッと笑みをこぼし、今度は右の頬に口づける。
「好きだ、日和」
耳元でささやき、何度も頬に口づけた。
だんだん日和の身体から力が抜けていく。
「日和、目を開けて」
「え……?」
日向は日和の潤んだ瞳をじっと見つめ、視線をそらすのを許さない。
「キスしていい?」
親指で日和の唇をそっとなぞると、日和は更に頬を赤く染め、うるうると涙で目を潤ませた。
「嫌なら引っ叩いてでも止めろ」
そう告げると、ゆっくり顔を寄せる。
鼻先が触れそうなほど近くまで来ると、もう一度日和の瞳を覗き込んだ。
いい?と目で尋ねると、日和は涙をいっぱい溜めた目を閉じる。
そっと優しく、想いを込めて、日向は日和にキスをした。
ん、と小さく日和がこぼした声が、日向の身体を一気に熱くさせる。
ギュッと日和を胸に抱きしめ、何度もキスを繰り返した。
もう何も考えられない。
誰にも止められない。
日向は気持ちに突き動かされるままに、日和を胸にかき抱き、唇を奪った。
ようやく身体を離し、互いにふっと息をつく。
コツンとおでことおでこを合わせた。
「日和の返事、心の中に聞こえてきた」
「……なんて?」
「俺のこと、大好きだって」
すると日和は目をぱちくりさせる。
「違った?」
いたずらっぽく尋ねると、日和は照れながら可愛い笑顔を見せた。
「ううん、合ってる」
そう言って日向の首に腕を回し、ギュッと抱きつく。
「私もあなたのことが大好きです。ぷんぷん怒ってる時も、ご飯をパクパク食べてくれる時も、フラワーセンターに連れて行ってくれた時も、素敵な誕生日プレゼントをくれた時も、どんなあなたも大好きなの」
「日和……」
日向は日和を抱きしめて、チュッと甘いキスを贈る。
「ぷんぷん怒ってる時ってなんだ?俺、そんな時あったか?」
「うん、いつも怒ってるよ。スマホぐるぐる回すなーって。でも怒ってる顔が面白いの」
「なんだと!?」
「ほらね、また怒ってる」
くすくす笑う日和に、日向はやれやれとため息をつく。
そしてまた優しくキスをした。
「日和」
「なあに?」
「奥田先生に返信しよう。『結婚式には喜んで出席します。追伸。私も大好きな彼氏が出来ました』って」
日和はキョトンとしてから、おかしそうに笑い出す。
「ふふっ、うん。そう送ってね」
「ああ」
二人はいつまでも抱きしめ合い、笑い合ってキスをした。



