「出来ました。名前のない辛い料理です」
そう言って日和は、作ったばかりのキムチと豆腐の鍋や炒めものをローテーブルに並べる。
「今夜は辛いもの日和ですねー」
「ははっ、自分の名前にかけてんの?」
「そうなんです。なんでもかけられますよ。小春日和にお花見日和。運動会日和にデート日和」
「今日はやっぱり辛いもの日和だな」
「はい!」
二人で笑い合い、美味しい食事を楽しんだ。
食後のコーヒーを飲みながら、日向は日和がアメリカンブルーの苗を株分けするのを見守る。
花に向き合って丁寧に作業する凛とした日和は、いつ見ても惚れ惚れしてしまう。
「出来た!うーんと、ジョリーの隣に置こうかな。ジョリー、新しいお友達だよー」
日和は男の子と女の子の陶器も出窓に並べた。
「ふう……。私もコーヒー飲もうっと」
日和が誕生日プレゼントのマグカップにコーヒーを淹れていると、ローテーブルに置いてあったスマートフォンにメッセージが届いた。
「誰からだろ。あ、かずくんだ」
スマートフォンを手に取り、メッセージを目で追った日和は、幸せそうにふわりと笑う。
その笑顔に見とれたあと、日向の胸はキュッと傷んだ。
(奥田先生から、何のメッセージだ?)
日和は笑顔を浮かべたまま、返事を打ち始めた。
「あれ?てんてんが上手く出て来ない。かずくんが、かすくんになっちゃう」
貸してみ、と言おうとして日向は口をつぐむ。
(かすくんで送ってしまえ)
醜く浅ましい、完全なる嫉妬だった。
「あ、出来た!って、違う。がすくんになっちゃった」
日和は困ったように眉をハの字に下げてスマートフォンと格闘している。
「うーん、もう電話しちゃおうかな」
そう呟く日和に、日向は思わず尋ねた。
「奥田先生、何の連絡だったんだ?」
「結婚式の日取りです」
ガーン!と日向は頭を殴られたようなショックを受ける。
(け、結婚式!?いつの間に?誕生日プレゼントをもらってから、一気に距離が縮まったのか?お礼のメッセージを送って盛り上がったとか?それにしても、昨日の今日でそれはないだろ。いや、幼馴染ならあり得るのか?)
さっきようやく己の恋心を認めたところだというのに。
告白する前に玉砕とは……。
「もう手遅れなのか?」
ポツリと呟くと、日和が「え?」と顔を上げた。
「やっと、やっと自分の気持ちに気づいたのに。俺にはそれすら打ち明ける権利はないのか?」
日和はぱちぱちと瞬きを繰り返す。
「えっと、なんでしょうか。どうぞ遠慮なくおっしゃってください」
「いいのか?言ったところで困らせるだけなのに」
「困るか困らないかは、お話を聞いてみないとなんとも……」
「結婚を決めた相手に好きだと告げたら、困らせるに決まってるだろ」
えっ!と日和は目を見開いた。
「私、そんなこと言いませんよ?どこからそんなお話になったんですか?」
「だから奥田先生と結婚するお前に、今さら俺が……」
「ちょちょ、ちょっと待ってください!かずくんと結婚するのは私じゃないですよ?同じ病院で働くナースですって」
「……は?」
日向は鳩が豆鉄砲食ったような顔になる。
「なんだって?どういうこと?」
「私が知りたいです。かずくんに昨日、誕生日プレゼントのお礼をメッセージで送った時に、結婚するって知らされて。おめでとう、結婚式には呼んでねって返事をしておいたら、日取りの連絡が来たんです」
「あ……、そういうこと」
「はい。だからかずくんに、喜んで出席しますって送りたいんですけど、手間取っちゃって。やっぱり電話にしようかな」
そう言ってスマートフォンを操作する日和の手を、日向はグッと掴んで引き寄せた。
そのままギュッと胸に強く抱きしめる。
そう言って日和は、作ったばかりのキムチと豆腐の鍋や炒めものをローテーブルに並べる。
「今夜は辛いもの日和ですねー」
「ははっ、自分の名前にかけてんの?」
「そうなんです。なんでもかけられますよ。小春日和にお花見日和。運動会日和にデート日和」
「今日はやっぱり辛いもの日和だな」
「はい!」
二人で笑い合い、美味しい食事を楽しんだ。
食後のコーヒーを飲みながら、日向は日和がアメリカンブルーの苗を株分けするのを見守る。
花に向き合って丁寧に作業する凛とした日和は、いつ見ても惚れ惚れしてしまう。
「出来た!うーんと、ジョリーの隣に置こうかな。ジョリー、新しいお友達だよー」
日和は男の子と女の子の陶器も出窓に並べた。
「ふう……。私もコーヒー飲もうっと」
日和が誕生日プレゼントのマグカップにコーヒーを淹れていると、ローテーブルに置いてあったスマートフォンにメッセージが届いた。
「誰からだろ。あ、かずくんだ」
スマートフォンを手に取り、メッセージを目で追った日和は、幸せそうにふわりと笑う。
その笑顔に見とれたあと、日向の胸はキュッと傷んだ。
(奥田先生から、何のメッセージだ?)
日和は笑顔を浮かべたまま、返事を打ち始めた。
「あれ?てんてんが上手く出て来ない。かずくんが、かすくんになっちゃう」
貸してみ、と言おうとして日向は口をつぐむ。
(かすくんで送ってしまえ)
醜く浅ましい、完全なる嫉妬だった。
「あ、出来た!って、違う。がすくんになっちゃった」
日和は困ったように眉をハの字に下げてスマートフォンと格闘している。
「うーん、もう電話しちゃおうかな」
そう呟く日和に、日向は思わず尋ねた。
「奥田先生、何の連絡だったんだ?」
「結婚式の日取りです」
ガーン!と日向は頭を殴られたようなショックを受ける。
(け、結婚式!?いつの間に?誕生日プレゼントをもらってから、一気に距離が縮まったのか?お礼のメッセージを送って盛り上がったとか?それにしても、昨日の今日でそれはないだろ。いや、幼馴染ならあり得るのか?)
さっきようやく己の恋心を認めたところだというのに。
告白する前に玉砕とは……。
「もう手遅れなのか?」
ポツリと呟くと、日和が「え?」と顔を上げた。
「やっと、やっと自分の気持ちに気づいたのに。俺にはそれすら打ち明ける権利はないのか?」
日和はぱちぱちと瞬きを繰り返す。
「えっと、なんでしょうか。どうぞ遠慮なくおっしゃってください」
「いいのか?言ったところで困らせるだけなのに」
「困るか困らないかは、お話を聞いてみないとなんとも……」
「結婚を決めた相手に好きだと告げたら、困らせるに決まってるだろ」
えっ!と日和は目を見開いた。
「私、そんなこと言いませんよ?どこからそんなお話になったんですか?」
「だから奥田先生と結婚するお前に、今さら俺が……」
「ちょちょ、ちょっと待ってください!かずくんと結婚するのは私じゃないですよ?同じ病院で働くナースですって」
「……は?」
日向は鳩が豆鉄砲食ったような顔になる。
「なんだって?どういうこと?」
「私が知りたいです。かずくんに昨日、誕生日プレゼントのお礼をメッセージで送った時に、結婚するって知らされて。おめでとう、結婚式には呼んでねって返事をしておいたら、日取りの連絡が来たんです」
「あ……、そういうこと」
「はい。だからかずくんに、喜んで出席しますって送りたいんですけど、手間取っちゃって。やっぱり電話にしようかな」
そう言ってスマートフォンを操作する日和の手を、日向はグッと掴んで引き寄せた。
そのままギュッと胸に強く抱きしめる。



