恋愛日和〜真逆の二人が惹かれ合うまで〜

日和がお風呂に入っている間、日向はローテーブルでパソコンを広げていた。
バスルームからは、ドライヤーの音と一緒に楽しそうな日和の鼻歌が聞こえてくる。

(コロッと元気になったな)

あまりの変わりように、思わずふっと笑みをもらす。

(それにしても、俺が女の子にプレゼントを選んだのなんて、初めてじゃないか?)

ふとそう思い、手を止めて考え込んだ。
恐らくそうだろう。
欲しいとせがまれて買ったことはあるが、自分からプレゼントした記憶はない。

かつての慎一のセリフを思い出す。

「彼女に『誕生日プレゼント何が欲しい?』って聞いたら『何もいらない。あなたと一緒にいられるだけでいい』って言われたから、ほんとに用意しなかったんだよな。で、後日フラれたと」

そうだ、これまでの自分はそういう男だった。

「日向はまだ本気で誰かを好きになったことがないんじゃないか?本気で自分が好きになった相手なら、少しでも喜んでほしいってあれこれ考えるようになる。プレゼントはいらないって言われても、何かを贈りたくなる。街を歩いてても彼女の視線の先を追って、こんなレストランが好きなんだろうな、とか、こういうアクセサリーが欲しいんだろうなって、色んな情報をキャッチしようとするんだ」

確かに今回、街で見かけた雑貨屋で、日和の喜びそうなマグカップを見つけた。
花を贈ったのだって、彼女が喜ぶだろうと思ったからだ。

(え、ちょっと待て。それだとまるで、俺があいつを……?)

その時カチャッとドアが開き、スッキリした顔で日和が現れた。

「お風呂も歯磨きも終わりました」
「ん、じゃあ早くベッドに入れ」
「佐野さんは?」
「ここでもう少しパソコン作業してから帰る。鍵はまたドアポケットに入れておくから」
「分かりました。じゃあ、コーヒー淹れますね。飲んでいってください」

日和はキッチンでコーヒーを淹れるとローテーブルに置き、ベッドに横になる。

「おやすみなさい」
「おやすみ。電気消そうか?」
「ううん、大丈夫」

妙ににこにこと嬉しそうな笑顔を向けられて、日向は居心地が悪くなる。
しばらくパソコンをいじってから振り返ると、日和はフニャリととろけたような笑顔のまま眠っていた。

(子どもか?)

呆れながらも、日向も思わず笑みを浮かべる。
コーヒーを飲みながら切りのいいところまで作業すると、立ち上がって電気を消し、パソコンを閉じてカバンにしまった。

「おやすみ」

ベッドの上のジョリーを日和の胸元に置き、ポンと日和の頭をなでてから、日向は玄関を出た。